平成22年度普通決算特別委員会市長総括質疑
※平成22年度は教育福祉委員会に所属し、福祉や子育て支援、教育の重要課題について議論を重ねるとともに、審議会やセミナーなどに積極的に参加して研鑽を深めました。民主党政権での野党時代でしたが、現場の生の声を受け止めて「建設型」の質疑を心掛け、次の時代を拓く斬新な視点と柔軟な発想を志して頑張りました。京都市はその後に「心の病」と「ひとり親」を含め、福祉政策が具体的に前進したのが誇りです。
【うつ対策】
◆吉田孝雄委員
どうぞよろしくお願い致します。今、公明党は「新しい福祉」と銘打ちまして、新たに顕在化してきた多様な福祉課題に光を当てて取り上げております。本日は、その中から何点かお聞き致しますが、1点目は「うつ対策」についてでございます。
少し古いデータですが、平成19年に厚生労働省が行なった「労働者健康状況調査」によりますと、仕事に関して強い不安やストレスを感じている人は、6割を超えているそうであります。労働者の方だけではなく、学生さんや主婦の方も、多くの方が悩みを抱えていらっしゃると思います。今や、だれもがうつ病になるリスクを抱えていると言っても過言ではありません。
うつ病は「心の風邪」のようなもので、風邪と同じように誰もがかかり得る病気だという説もございます。重症になる前に、風邪と同じぐらい日常的に治療が受けられるような環境整備が重要であります。そのためにも、啓発活動の強化と専門家の育成が重要であり、行政の支援も必要であると問題提起をさせていただきたいと思います。
特に今、認知行動療法が注目をされています。この認知行動療法は、うつ病に高い効果があると言われているカウンセリング療法であり、薬に依存しないという特徴があるということで大きな期待が寄せられています。
我々公明党は、国会議員と地方議員が「チーム3000」を結成し、様々な政策課題に取り組む中、この認知行動療法をはじめとするうつ病対策を充実し、患者さんの社会復帰をご支援する取組を積極的に進める中で、今年4月から認知行動療法の保険適用が実現しました。
しかし、今の大きな問題は、この認知行動療法を行なえる専門家の方が少ないということなんですね。うつ病の患者さんのニーズにこたえるには、この新しい治療法の専門家を育成しなければなりません。ところが、民主党政権が付けたこの認知行動療法の専門家を育成する予算は、何と、わずか1,000万円ということでございます。
先日開催された公明党女性局の研修会では、日本における第一人者である慶應義塾大学保健管理センターの大野教授が講演されました。私は男性でありますので出席はかなわなかったわけですが、出席された方に聞きますと、認知行動療法はうつ病だけではなくて、パニック障害、不眠などにも効果があり、学校の生徒の荒れた行動を変えるためにも役に立ったという実績があるとのことであります。
ようやく本年、保険の適用がされたとはいえ,現時点では、その保険の適用は医師にとどまっておりまして、普及が進まないのではないかと心配もされています。カウンセラーの治療にも保険適用がされるように、現在、各方面からの真剣な声が上げられているところでございます。是非、うつ対策、とりわけその中でも認知行動療法について、京都市において、より先進的な取組を進めて行くべきと考えますが、いかがでしょうか。
◎星川茂一副市長
うつ症対策への取組についてでございます。うつ病につきましては、従来型と新型と言いますか、若者型があるという風に言われておりまして、本当にこれは、京都市役所もそうですけれども、どの会社もまたご家庭も含めて、大変大きな社会問題になりつつあると認識を致しております。
自殺の大きな原因にもなっているということでございまして、私どもはやっぱりこれに対する対応は、社会的に大きな取組を進めて行く必要があるという風に思っているところでございます。今、先生からお話のありましたうつ病の認知行動療法、これがかなり大きな効果があるということは聞いております。ただ、ご指摘のように、人材育成が進んでいないということもあって、京都市内では府立医大の精神科でしか治療が出来ていないということを聞いておりますし、また、治療単価と言いますか、診療報酬単価が非常に低いということでございます。
この認知行動療法というのは、その人の気分や行動、これがその人独特の認知によるものということで、どういう認知をしているかということを探りながら治療をすると。この人は、いつも何かあっても悲観的に捕らえているというようなことにも寄り添いながら、一つ一つカウンセリングで治療をしていくということで、時間が非常に掛かる、最低30分ぐらいは掛かるということのようですけれども、診療報酬単価が少ないということもあって、保険適用にはなりましたけども、なかなか広がりが今後も難しいというのが状況だという風に思っておりまして、厚生労働省は今回、少しお金を作るということのようですけれども、まだ抜本的な対応を進めていくということにはなっていないようでございます。
私どもも、うつ病対策は社会を挙げて取り組んでいく必要があるという風に思っていますし、京都市職員のメンタルヘルス問題もございますので、もう少しこの問題に焦点を当てた取組をやっていきたいという風に思っております。
◆吉田孝雄委員
先ほどご紹介したように、この認知行動療法の予算も大変少ないという実態がありますし、同時に、心の病についてキメ細かく対策を進めている国の「自殺対策緊急強化基金」も来年度打切りになるとお聞きをしております。
会派を超えて、各委員の皆さんにも、「うつ対策を進めていくため力を合わせていこうではありませんか!」と申し上げたいと存じますので、よろしくお願い致します。
【障がい者就労支援】
◆吉田委員
次に、障がい者の就労支援についてお聞き致します。私は6月10日に開催された「第3回京都市障害者就労支援推進会議」を傍聴しました。この会議は、企業や就労支援機関など、40名近い有識者や関係者が一堂に会したスケールの大きなものでして、傍聴をさせていただきまして大変勉強になったんですけれども、特に心に残ったのは、東京から参加されたNPO法人「障がい者就業・雇用支援センター」の理事長さんがおっしゃった言葉でありました。
それは、「障がい者の実態をよく知らない企業側と、企業の実情をよく分からない就労支援側のお互いの意識のギャップを埋めなければならない」とおっしゃったわけであります。社会で活躍したいと念願される障がい者の方と、福祉の貢献を志す企業側のそれぞれの思いを仲立ちしてコーディネートする立場である行政の役割は大変大きいと思いました。
事業はまだ始まったばかりということで、試行錯誤の段階とは存じますけれども、両者の意識ギャップを埋めていくための担当者の努力に敬意を表するとともに、情報を蓄積し、分析し、キメ細かく、そして積極的に進めていただきたいと、心から期待をさせていただいております。
そこで問題提起したいのは、先ほどの質疑と関連するんですが、心の病、すなわち精神障がいの方の就労の問題であります。先ほどの会議でも、京都の障害者就労センターの所長さんも、かつては知的障がいの方の相談が多かったけれども、最近は精神障がいの方からの相談が増えているという実態が報告されていました。
また精神的な病の方は、多くが大学に入学してから、あるいは就職してから発症されて、そして退学や退職を余儀なくされる方が多く、そういう方は、時間を掛けて治療された結果、社会復帰を目指すときは、もう30歳を超えておられるというわけであります。
なかなかそういう方は社会に適応出来にくいということもありますし、また、せっかく就職出来ても、周囲となじめないまま長く続かなかったりするケースが多いということでありまして、そのような方々に共通する特質である「専門性は高いけれども社会性適応に問題がある」という点を理解して、受け入れる企業側の環境整備も望まれているところであると思います。
福祉側と企業側が連携を深めて、そして情報の蓄積と活用を進めることが重要であり、行政の役割が大きいと思います。心の病の方を含めた障がい者の方々の就労支援を柔軟に、そして積極的に進めていくことが心豊かな社会を実現すると確信します。この事業の今後の方向性と課題解決のご決意、ご見解をお聞き致します。
◎星川副市長
精神障がいのある方の就労支援ということでございます。障がい者の方は、精神障がいに限らず、最近は就労意欲が高まっており、また、雇用する側の理解と努力も進んでいるというような中で、かなりの進展があるのは事実でございますけれども、経済的な冷え込みという部分ではなかなか苦戦をしているということでございます。
そういう中で、さらに精神障がいのある方の就労支援という面で言いますと、精神障がいについては、やはりずっと継続して医療面での対応をしていく必要があるという部分がございますので、医療機関との長期的かつ継続的な連携をどう図っていくかというような問題が非常にあるというのが1点と、それから、これは一般的にかなり改善はされていますけれども、やはり精神障がいの方に対するある程度の社会的偏見があるという中で、この部分についての啓発も、やっぱりやっていくことが大事な観点だろうという風に思っています。
そこで、先生から30歳を超えてからの就労支援ということも含めて、どうしていくことが必要なのかというお話がございました。いったん会社を辞めて次を就労するのはなかなか難しい状況がございまして、それをどういう手立てで支援していくかということですけれども、私どもとしては、今、こころの健康増進センターで二つの事業をやっております。
一つは就労準備デイケア事業というものでございまして、統合失調症の方などが、朝起きられないとか気分が安定しないとかということで、次の就労をするためにその辺の改善をしていく必要があるわけですけれども、これを医師の指導の下で病気との付き合い方でありますとか対人関係をどうしたらいいのかということを、こころの健康増進センターの職員が一緒に付き添いながら就労準備に励んでいただいているということでございまして、21年度は82人の方がこの施設を利用しているということでございます。
さらに、もう一歩進んで、一定期間に事業所に通いながら、集中力や対人能力、仕事に対する持久力なんかを付けていただこうということで、「精神障害者社会適用訓練事業」という取組も、同じくこころの健康増進センターで実施致しております。
21年度は51名がここで訓練を受けました。その結果、就労した方が9名、現在ハローワークで就職活動をしている方が5名というようなことで、少しずつ成果は表れてきているということでございますけれども、これについては広いネットワークで支援をしていくということがやはり一番大きなことでございます。
京都府の方もジョブパークで対応していますけれども、精神障がいの方にどう対応したらいいか、もう一つ的確な対応ができていないということも含めまして、この障がい者就労という部分で、京都市と京都府、それからハローワークで、今回非常に大きな結束が出来ておりまして、先生に会議に出ていただいたように、非常に前向きの議論とネットワークを大きく作っていこうということになっています。
ですから、そういう意味で、この精神障がい者の就労支援という部分についても、そのシステムを検討していこうという部会を既に立ち上げてもらっております。ここでの検討を踏まえて、それぞれが更に大きな取組をしていくということが必要かと思っております。
【ひとり親支援】
◆吉田委員
最後に、ひとり親支援についてお聞き致します。5年前の国勢調査では、京都市のひとり親家庭は1万世帯、そのうち父子家庭は約930世帯というデータでございます。
昨年6月に実施された「京都市ひとり親家庭実態調査」では、父子家庭の3分の1を超える343名の方から回答が寄せられ、シングルファーザーの方の問題意識が高まっているという状況でございます。
その中で特に、「ひとり親家庭日常生活支援事業」を利用したいと答えた父子家庭の方は母子家庭の倍あったというデータが出ております。そういう意味では、シングルファーザーの方は、生活支援、情報交換、交流事業のニーズをお持ちであると受け止められると思います。
昨年5月、我が会派の平山議員の質問に答えて、市長も「日常生活の支援をする事業の充実と相談に応じる生活支援事業の実施、交流を行うファミリーネットワーク事業の拡大を実施する」と答弁されたわけでございます。
私も大変心強く思いまして、2月に開催されたセミナーの見学に行かせていただいたわけなんですけれども、そこでは父子家庭の方はたったお1人のご参加にとどまっておりました。また、今回の決算委員会の局別質疑におきましても、この1年間の父子家庭の参加は3世帯だったということでございます。
ここから導き出せる問題意識は、大変せん越な言い方でありますけれども、昨年の答弁における市長のご決意が具体的には進んでいないのではないか、もっと十分の行き渡らせていく必要があるのではないかと思いますけれども、最後にこの点をお聞きして終わります。
◎門川大作市長
京都市の施策、国もそうですけど、今まで母子家庭という視点でありました。しかし、父子家庭が大変深刻な状況である、ある意味では母子家庭と同等ないしはそれ以上の課題があるということで、あらゆる取組をひとり親家庭という視点で改革しまして、今その取組を進めているところであります。その実が上がるように引き続き努力して参ります。
(ひとり親支援は、センターがリニューアルされるなど大きな成果が挙がっています。障がい者支援や子育て支援、人間教育など、党が掲げた「新しい福祉」のビジョンが京都市にも貢献できたと確信します)
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