平成22年度公営企業予算特別委員会市長総括質疑
※膨大な累積赤字が続く交通事業の健全化に向け、粘り強く委員会の場で質疑を積み重ねていく中で、その総決算と言うべき公営企業予算委員会の総括質疑に登壇。市民の生の声を求める場の設定や駅ナカビジネスなど、具体的な政策を提言しました。当時は上京区選出でしたので、左胸に区のイメージキャラクターをあしらったバッヂを着用して臨みました。
【地下鉄経営健全化計画】
◆吉田孝雄委員私のこの胸にさん然と輝くバッヂは、上京区の130周年記念で市民から公募されて決められたマスコットキャラクター「かみぎゅうくん」のデザインがあるバッヂでございます。上京区民をはじめ、多くの市民の皆様の声を代表する思いで質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
私、かねがね、市長があらゆるところで「地下鉄は京都の宝である」とおっしゃっておられることに対しまして、心から賛同をしている1人でございます。この「京都の宝」を朽ち果てさせてはなりません。この強い決意で、歯を食いしばって、健全化のために力を尽くしておられる職員の皆さんに敬意を表したいと思います。
このたび、交通事業の「経営健全化計画」がまとまりました。この計画のポイントにつきまして、私は、1つは国からの支援を引き出すことができるかどうか。もう1つは、市民の皆さんからの理解と応援をいただけるかどうかではないかと思います。
「国に理解を求めよ」とか、「国に支援を求めよ」とか、「国に強く言うべきである」と繰り返し繰り返しおっしゃる人もいるわけですけれども、国は『打ち出の小づち』ではないわけでして、勘違いしてはいけないと思えてなりません。
逆に、国の首を縦に振らすだけの説得力が大事であり、そのようなプレゼンテーションをするのが京都市の仕事でありますし、そのために庶民の声を届けて、未来の京都のために知恵を発揮して、政策提言をするのが議会の役割ではないでしょうか。
国を説得するだけのビジョンを示して、具体的な施策を迅速かつ的確に打ち出し、そして透明性を確保して矢継ぎ早に公開していけば、市民の皆さんからご理解も応援もいただけるものであると確信しております。
そこで大事なのは、ここから「反転攻勢」が始まるんだという機運を盛り上げていくことです。市民ぐるみで、地下鉄再建のために市民の声をもっともっと積極的に求め、市民参加の事業を打ち出し、手を替え品を替えて継続していただくことが大事であると思います。
例えば、「地下鉄5万人の増客」おきましても、本日の委員会で様々な意見が出てきたわけですけれども、市民の皆さんからの関心もだんだん大きくなってきていると思います。決意だけであれば誰でもできるわけであります。精神論で終わらずに、そこから具体的なビジョンを持っていくことが重要ではないでしょうか。
まず、全庁挙げて取り組んでいく仕組みをしっかりと確保していただいて、それを継続して練り上げ、具体的に次々と手を打っていく。これが大事でありますし、もう1つは、市民の声を幅広く求め、その声を基にして、市民が侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を重ねる場を作っていただきたい。その必要が私はあると思うわけであります。
今、「まちづくり100人委員会」でも、乗り物や交通というテーマが出されていますけれども、それは「5万人の増客」という点に特化せずに、いろんな市民のライフスタイルやまちづくりという様々な広い観点であります。それはそれでやっていただくわけですけれども、特別に「5万人増客」に特化していく仕組みが、私は必要だと思います。
この中間提言でも、有識者の先生方から、健全化の推進には「資本比率」を検討する金融チームと「増収増客」などを検討する交通チームに分けていくべきであるとされ、それぞれの視点から問題を整理する必要があるということをおっしゃっておられました。いわゆる「分科会的」な取組が必要であるというご提言であると思います。
私自身、本当に同感でございます。「5万人増客」を指標テーマにしたうえで、議論をしっかりと進めていただいて、様々なアイデアを出し合い、また幅広く集めた意識調査を踏まえた議論をし合う分科会を、市民会議という名目で設置していけばどうでしょうか。
主婦の方や学生さん、高齢者の方、サラリーマンそして若手職員の皆さんなどなど幅広い世代の、利用客の立場からの市民会議を推進しいただくという点が必要ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
◎由木副市長
大変積極的なご提案を頂きまして、ありがとうございます。 これまでもいろんな形で交通局には意見が寄せられております。年間1,000件ぐらい寄せられているようですが、そのうちの8割は大体意見とか要望に関するものでございます。
そういった形で、いろんな意見をこれまでも聞いて参っておるところでございますが、特にこれまでは、健全化を全体的に見ていく「健全化計画」を作らなければいけませんでしたので、その面でのご意見を頂くということをやって参りましたけども、いま委員からご指摘いただきましたように、「5万人の増客」をまず指標ターゲットにした新しい取組をやっていくべきではないかというご御提言、大変に示唆に富んだご提言かという風に思っております。
やはり、市民の方々が地下鉄を自分たちのものだという風に、どう認識していただくかということを考え、その中で、いろんなアイデアとかご意見も頂くということかという風に思っておりますので、例えば昨年の12月に東西線の乗客の方にアンケート調査を致しました。
結果はおいおい、年度内にはまとまってくるかと思いますけども、そういうような取組をするとか、いろんなやり方はあると思います。これから「5万人達成」に向けてどういうやり方でやっていくのか、その辺も含めて十分検討させていただきたいと思っております。
【具体的な提案】
◆吉田委員
前向きなご答弁をいただきました。大いに期待したいと思います。そこで私の方からも、具体的な提案を幾つかさせていただきたいと思います。
1つは、交通局のホームページに「5万人増客」に向けての専用ページを作っていったらどうでしょうか。交通事業連絡協議会で全庁挙げての議論がされた場合などに、その内容が具体的に、こういうことが語り合われましたとかいうような、速報の報告のニュースを流される。また、市民からのアンケート調査の結果について、このようなテーマで進めようと思っていますが皆さんどうでしょうか、とかいうように聞かれる。新しい具体的な取組が今このように決まりましたという告知をされる。それぞれタイムリーに掲載をしていただくということがいいのではないかと思います。
また、順次「日めくりカレンダー」のように、5万人に向けてここまで進んでおりますと。この上半期は前年対比8,000人ほど増えましたとか、そういう風なページを開設されたら、利用者の方が見たいときにその情報を見れるということがあると思います。
もう1つは、本市が毎月16日に設定している「DO YOU KYOTO?デー」、これを大いに活用していくべきです。全庁挙げてというご決意ですけれども、具体的に各局で、この「DO YOU KYOTO?デー」の日に地下鉄を盛り上げようという取組をされるということであります。
具体的に言いますと、各局持ち回りで地下鉄全線の各駅でイベントや行事を開催していただく。今月は何とか局、来月は何とか局。そしてその駅に地下鉄で来られた方に「お得なうれしい思い」をするようなインセンティブを提供していく。そういう計画を各局で組んでいただくわけなんです。そして、その予算も各局で負担をしていただくと。
各局がお互いに力を出し合い、知恵を出し合って、負担も共有していく中で、「増収増客」とか「DO YOU KYOTO?」への市民意識も高まっていく。このような取組へのリーダーシップを是非取っていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
◎由木副市長
具体的に、ホームページの問題、それから日々の達成状況と言いますか、そういうような状況を表すようなカレンダーみたいなものとか、あるいは「DO YOU KYOTO?デー」などについて、ご提言を頂きました。それぞれ大変魅力的なご提案だと思います。
特に、「DO YOU KYOTO?デー」については、毎月16日に「環境モデル都市行動計画」の中でいろんな取組をやっていくつもりでございますので、その中で特に地下鉄あるいは市バスの増客に結び付くような取組を、その視点から行なっていくというのは大変意味のあることだという風に思います。
ここですべて、「はい、今すぐやります」とは、ちょっとまだ申し上げられないんですけども、頂いたご提言については、できるものは是非取り組んでいきたいと思いますので、検討させていただきたいと思います。
◆吉田委員
今すぐ、この場で「はい」と決定して頂いたら非常にいいんですけれども、そういうわけにはいかないのはよくよく理解しております。その理解の下で、もうあと2つ提案をさていただきます。
1つは「婚活とのタイアップ」という点でございます。先の本会議でも市長から「前向きに取り組んでいく」とのご答弁がございました。私自身、この「婚活」というテーマに関しましては、昨年から常任委員会で実施を訴えておりましたし、また総合企画局とも個別に意見を交換したり、若手職員の方々ともお会いしたりしまして、今回のご答弁に対しては大変喜んでいる1人でございます。
昨年、若手職員の方々で編成された「歩くまち・京都地下鉄増収増客対策チーム」が活動報告書を出されまして、ぼろぼろになるまで読んでいるわけでございますけれども、この中でも、男女の出会いを支援する行政の取組にタイアップをされたらどうかと。それが「地下鉄増収増客」にプラスになるのではないかと。地下鉄がその出会いの場を提供できるのではないかと、このような提案があったわけなんです。
たとえば、醍醐寺や二条城、平安神宮で出会い、疏水を散策し、また北山や四条で、おしゃれな洋菓子や情緒たっぷりの和菓子を味わい、そしてまた地下鉄に乗って移動してパーティをするというような取組でございます。
これは、交通局単独で部署を作ってくれとか、あるいは常設センター云々とか、そういうことを言うてるわけではございません。全庁挙げてやっていただくテーマではなかろうかと思うわけでございます。
そこで1つ思いますのは、シンボリックな取組として四条駅がリニューアルされるので、このオープンの目玉行事にしたらどうかと思うわけでございます。また、それ以降も、春や秋の観光シーズンの合い間の少しちょっと客数が落ちるタイミングもあると思いますけれども、このときにもイベントを打つということも1つの考え方ではないかということでございます。
ついでにもう1点言わせていただきますと、地下鉄構内を有効利用する取組も進めていただきたいということでございます。具体的には、地下鉄構内のスペースにおいて「お茶会」をしていかれたらどうかなと思っております。また、舞妓さんに集まっていただいて舞っていただくということも1つのアイデアでございます。これは、産業観光局が「伝統産業ふれあい館」で実施し、大変大きな効果が出ている取組でございます。これを是非やっていただくというのも1つかも分かりません。
親子スタンプラリーとか、美術系学生の作品展などのイベントも良いと思いますし、また地下鉄の構内に市民図書館を設けて、いつでも借りて、いつでも返せるという図書館の考え方。あるいはまた、忘れ物の傘を「善意の傘」として活用し、急に雨が降った日に、傘を持っていない方が地上に上がる前に借りて、翌日晴れた日に返して来られると。そういう善意と善意の交流が図られていけるような場を、地下鉄が提供していけるような考え方です。
また、寒い冬には、地下鉄構内に「ウォームエリア」みたいな所を設けまして、そこで冷たい風が吹いている日に地下鉄を降りてほっとするときに、このエリアに行けば暖かい思いをすることかできる。そこでひと息ついて地下鉄に乗っていくというような場所を設定される。他にもいろんな考え方やアイデアがあると思います。京都の宝である地下鉄を有効利用していく、このような様々な提案について、前向きに検討していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
◎門川市長
様々なアイデアを頂いております。午前中の審議からも頂いております。すべてのことについて、可能性を市民ぐるみで探っていきたいと思っています。そもそも環境政策、あるいは「歩くまち・京都」総合交通戦略、あるいは新しい観光政策、これは「歩いてこそ京都」と言っております。あるいは、大学政策をはじめ、いろんな市民の絆を深めていくようなすべての取組をポジティブに考えて、可能なものから実現して参りたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
【駅ナカビジネスの充実】
◆吉田委員
大いに期待をしたいと思います。また、いろんな市民の皆さんから寄せられる声も順次お届けさせていただきたいと思っております。特に、東西線に関しましては、やはり「増客」の取組が必須だと思います。赤字の典型と言われていて、ただでさえモチベーションが高くないので、それを何とかしていこうというお声をどんどん集めていきたいというように思っております。
昨年の10月と12月に、2度にわたって徹底した調査をされたとお聞きしておりまして、2,200件以上の回答も頂いているということでございます。市民ニーズを求めて、それを反映して施策を組むということが大事であると思いますので、この点に関しましても、市民の皆様から大きく評価をしていただけるものであると思っております。
そこで、「駅ナカビジネス」につきましては、この聞き取り調査で皆さんから寄せられた声はかなり好評であったというように聞いておりまして、期待が寄せられた中で、やっぱり「コンビニ」は半分以上の方が望んでおられると。また「ATM」や「カフェ」そして「本屋さん」、これが“ベスト4”であるとお聞きしておりまして、本当にこれは大事な観点だなと思ったわけでございます。
特にカフェと本屋さんは、地下鉄構内では消防法の絡みとかがありまして、大変厳しいということをお聞きしているわけでございます。しかしながら、ニーズが高いということも無視できないわけでございまして、やはり他都市の駅ナカビジネスを見ても、学生さんやサラリーマン、OLの方々、あるいはまた主婦の方々も、本屋さんやカフェを利用されておられるということでございます。
長期的ビジョンに立って、1つ1つ、緩やかでも結構ですので、着実にこれらの「駅ナカビジネス」に関してニーズにこたえていくという点を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
◎由木副市長
駅ナカにつきましては、まず四条のリニューアルを着々と進めております。先般、62社が説明会に参加していただいたということもございまして、この夏のオープンを目指して魅力的な店舗づくりを進めていきたいと思います。
こういう四条とか京都とか、たくさんのお客様が集まってくる駅には、かなり投資を致しましても、恐らくそれに見合うリターンがあると思います。そんな中で、特にコンビニの問題、それから飲食については、どうしても消防法に関連する排煙ダクトの問題でございますとか、幾つかのクリアしなければいけない問題がございますので、できるもの、できないものがございますけども、そういったニーズを的確に把握しながら店舗を展開し、魅力的なものを作っていきたいと思います。
また、それ以下のややお客様の数が少ない駅につきましては、多大な投資はなかなか難しいんですが、簡易店舗とかワゴンとか、あるいはイベントのときの臨時の販売所とか、そういったいろんな工夫ができると思いますので、そういうものもいろんなニーズを捕らえながら、的確にまた機動的に進めて参りたいと思っております。
【ミスト装置の充実】
◆吉田委員
大いに期待をしたいと思います。最後でございます。CO2削減のための環境政策についてお聞き致します。
上下水道局も、大いにこの環境に関しまして貢献をしていこうと決意をされておられて、具体的な数値目標を立てて、アクションプランをお示しでございます。大いに評価されるものであると確信をするものでございます。このように、公共機関が率先して取り組まれるということは、民間も引っ張ることになりますし、市民の意欲も大いに刺激をすることになると思います。
そこで、昨年の夏に実施された「ミスト装置」に関しましてであります。「ミスト」は、霧を吹き付けて、その涼気を提供するという装置で、非常に好評であったということでございまして、私どもが見学した際には、何度もその前を通ったりとかして、わざわざそこから市役所に入るようなことをやらせていただきました。
ただ、この22年度予算では、具体的にお示しにはならなかったので、非常に心配をしております。8月のアンケートでも9割以上の方が大変評価をしておられるということでございますので、「ミスト装置」については、22年度も実施の方向で是非ご検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。最後にその点をお聞きして終わります。
◎星川副市長
昨年の8月に、環境にも優しく、また水需要の増大にもつながるということで、上下水道局が頑張って「実証実験」をしてもらいました。先生ご指摘のように、本当に9割の方に好評で、肯定的なアンケートを頂いております。
実際にも、大体平均で3.3度の気温低下があったということで、効果も認められているということでございまして、環境問題をみんなで考えるうえでも非常に大事な事業だと私ども思っております。民間にも広げていきたいと思っております。
22年度は、何とか市がもっと率先して広くということで、動物園でありますとか、マンガミュージアムでありますとか、そういう人のたくさん集まる所で何とか導入できないかということで、関係各局にも指示を致しておるところでございまして、市長からも是非積極的に取り組むようにという指示を頂戴しているところでございます。
(市民ぐるみの交通事業改善の取り組みに貢献することが出来ました。この当時は「困難です」という答弁でしたが、粘り強く議論を重ねた結果、地下鉄構内に書店やカフェを出店することも実現。ミスト装置もこの質疑によって実を結びました。本当に良かったと思います)