吉田たかお演説集

第22回五大政令市政策研究会

平成26年(2014年)8月6日 大阪市リーガロイヤルホテル

※公明党の政令市議員団5都市(京都・大阪・神戸・横浜・名古屋)が切磋琢磨して政策を研さんする研究会の第22回目は大阪市で開催。重要な政策課題である「地域包括ケアシステム」について、京都市会議員団の代表として発表しました。
 

【はじめに】
 今回の政策研究会のテーマである「地域包括ケアシステム」の中でも、特に絞り込んで「京都市の認知症対策」についてご報告します。ネーミングは、「地域で気づき・つなぎ・支える〜認知症総合支援事業〜」というもので、平成25年度から本格的にスタートしました。

 京都市の認知症対策のコンセプトは、認知症の人が施設に入るのではなく、極力、住み慣れた地域で暮らし続けていくことを目指し、そのために、早期発見・早期相談・早期診断を重視して、地域ぐるみで高齢者を支え、きめ細かく支援しようというものです。

 ポイントは3つあり、1つは「認知症になりにくい生活への啓発」、2つは「早期発見・早期相談へのサポート」、そして3つめは「地域で支える」というものです。

 そのために、地域医療の担い手である医師会と介護の現場である地域包括支援センターが本格的にタイアップしています。
 

【具体的な事業】
 具体的には、1つは、「認知症相談支援ガイドブック」を作成し、介護・福祉支援者をサポート。2つは、月に2回発行の「市民しんぶん」で大々的に広報するとともに、この紙面を「パネル」として加工して、地域で開催のイベント等でも掲示して活用しています。

 そして3つめは、チェックシートを作成したことです。これは、1人1人が自己診断していくものと、もう1つ身近な家族が日頃の行動や予兆を見極めることで、早期の発症段階での対応を可能とするものです。   

 これら共通のツールを駆使して、具体的に地域で実施するにあたっては、全市で同じやり方ではなく、6つの地域が実情に合わせて工夫を凝らすという、まさに「地域発」のオリジナル事業を展開しました。また、各地で開く認知症フォーラムの開催において、チェックシートをわかりやすく解説するとともに、その地域で行っているモデル事業をパネルなどで展示しました。

 もう1つ、京都市の事業の特徴としては、地域包括支援センターが実施する家庭訪問事業や平成18年に立ち上げた「1人暮らしお年寄り見守りサポーター」と連動し、地域ぐるみの支援体制(老人福祉員・地域包括・民生委員ほか)を深めていったことです。

 特に、65歳以上の独居高齢者約7万人のお宅を一巡したことで、個々の生活状況を把握し、「おかしいな・・・」と気づいて早期に対応する可能性を拡大しているといえます。こうした「アウトリーチ型」が、今後ますます重要になってくると考えます。
 

【25年度の総括と今後の展望】
  さて、認知症対策の初年度であった平成25年度を総括しますと、1つは、早期発見・早期相談に向けた認知症チェックシートの作成や地域包括支援センターの相談対応力の向上に向けたガイドブックの作成をはじめ、「気づき」と「つなぎ」に重点を置いて取り組んだことで、今後の認知症に対する地域での取組が緒についたこと。

 2つには、チェックシートの地域資源情報資料の作成やモデル事業の実施など地域での取組を進めたことで、各地域において認知症医療と介護との連携体制に向けた理解が進み、お互いの顔の見えるパートナーシップを築くことができた―といえると考えます。

 これらを踏まえ、平成26年度は、「つなぎ・支える」視点に着目し、地域での医療と介護・福祉の連携強化を図るモデル事業を、6か所から10か所へ拡充します。同時に、京都市版「認知症ケアパス」(仮称)を作成して、医療と介護の様々な地域資源を明らかにして、認知症の状態に応じた適切な医療と介護サービス提供の流れが誰でも分かるよう整理する方針を明らかにしました。

 また、好評のチェックシートを増刷するとともに、この活用をいっそう普及するための研修等も積極的に展開するとのことです。

 そして、「若年性認知症」への支援を講じるための準備も26年度よりスタートします。

 25年度の総括を踏まえて、関係機関との緊密な連携を重視し、本人と家族を支える取組を積極的に進め、総合的かつ重層的な認知症支援体制に取り組む方針です。
 

【京都市の現場からの声】
 最後に、京都市担当者に、今後の重要な観点は何かをお聞きしたところ、「若年性認知症への対策」が急務だということでした。若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症の総称であり、失業により社会的な居場所と生活基盤を失う等の問題が避けられません。したがって、経済困窮への支援や就労支援など、医療や介護の支援以外の多岐にわたる課題があるとのことでした。

 わが京都市会議員団は、昨年の本会議代表質問で湯浅議員(右京区)が市民相談を機にこの若年性認知症を取り上げ、本格的な対策を論じたことも大きなきっかけになり、医療関係者や介護従事者の協議の際にも深刻に話われているとのことです。

 やはり、現場からの声が大事です。今後も、地域に根差した取り組みを進めていこうと改めて痛感しました。以上です。

(従来の形式とは違い、自席に座ったまま発表しました。重要テーマなので活発な意見交換があり大変に刺激になりました。翌日は大阪梅田のグランフロントを視察。都市間競争の時代を目の当たりにし、目から鱗が落ちました)


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