吉田たかお演説集

空き家対策条例への賛成討論

平成25年(2013年)12月11日 京都市会本会議場

※平成22年11月議会で私が取り上げて以来、いっかんして議論をリードしてきた「空き家対策」が大きな前進を果たしました。都市計画局で専門PJが結成され、識者や事業者・市民の代表で構成された検討委員会での審議と市民意見募集(パブリックコメント)を経て、空き家の活用と適正管理を規定する条例が提案されたのです。私は万感の思いを込め、最終本会議に登壇して賛成討論を行いました。
 

【空き家対策条例提案の背景】
 公明党京都市会議員団は、議第202号「京都市空き家の活用、適正管理に関する条例」に、賛成するとの態度を表明しておりますので、その理由を述べ、討論を行います。

 人口減少時代に突入し、少子高齢化が加速する中、平成20年時点の空き家は全国およそ757万戸で、住宅総数に占める割合は13%を越えています。空き家が管理不全の状態のまま放置されている実態は、防犯や防災、景観、地域衛生そして地域コミュニティの観点からも喫緊の課題であり、平成22年に埼玉県所沢市で制定されて以降、空き家への総合的な対策を進める条例は、全国で200本を超えています。

 我が会派は、平成22年11月議会の本会議代表質問で、空き家対策の重要性と条例制定を提案して以来、昨年3月に東京で開催されたセミナーに4名の議員が参加したほか、首都圏の議員さんとも意見交換の場を持つなど研さんを深めるなか、本会議や常任委員会、特別委員会などの席上で活発な提言を積み重ねてまいりました。

 24年、本市は学識者・事業者・市民の方々が参画された京都市空き家対策検討委員会を設置し、約半年間で4回にわたる濃密な議論が展開されたのを受け、本年7月に「総合的な空き家の取り組み方針」を策定するとともに、条例の骨子案を取りまとめました。7月25日から募集されたパブリックコメントでは、1ヶ月で総数295件の貴重なご意見が寄せられ、これらを反映したのが、今議会で上程された条例案なのでございます。
 

【条例の画期的な意義】
 本条例案は、第3条で4点の基本理念を定め、第4条で本市の責務を4点に渡って義務化し、第5条で空き家所有者に空き家の活用と適正管理を義務付けました。所有者に対しては、11条の第1項、12条の第1項において努力義務をお願いした上で、13条で定義付けた「管理不全状態」の解消を義務付けているので、一定の整合性が確保されていると理解します。

 14条からは、管理不全状態を解消するために、助言・指導・勧告という措置を重ね、それが解消されない場合に15条で命令し公表するという踏み込んだ措置を講じ、それでも違反した場合に限定して25条で罰則を規定しています。

 このように、本条例は空き家所有者に対して段階をしっかりと踏んで明確な対策を積んでおり、財産権や所有権への一方的な侵害にならないよう配慮されているのではないでしょうか。

 16条では空き家所有者が判明しないケースを想定しての対策が記され、17条ではこうした理由を含め解決が長引いて人の生命や財産に危害が及ぶケースを想定しています。20条では家屋は除却されても跡地が放置されて抜本的な解決に至らないケースを想定しての対策が定められています。特に、20条の家屋除却後の跡地対策は、現場の実態に即したものであり、他都市の条例に例を見ない画期的な内容ではないかと考えます。

 このように、本条例の内容は実にきめ細かで、検討委員会で多角的に協議された議論や他都市の具体的な事例を徹底的に研究した成果が実を結んでいるものと、高く評価するものです。

 また、我が会派の有志が参加したセミナーにおいても、意見交換した議員さんたちから、京都市が平成22年度から事業展開している「空き家流通促進事業」に高い関心が寄せられていました。本条例で明記した「活用」という理念は、多くの自治体で展望されている方向性と軌を一にするものであると申し上げるものであります。
 

【今後の方向性への直言】
 近い時期に、国会で「空き家対策特別措置法案」が提案され、長年の懸案であった税制面での課題や様々な支援措置が議論されるタイミングであり、本条例で市民に身近な自治体の対策を明確に定める意義は大きいと確信するものです。

 本条例が施行され、生活現場における具体的な措置を実施するにあたっては、市民の皆さんからの理解が不可欠です。広報周知をより徹底していただくよう求めます。

 また、具体的な問い合わせを直接受ける区役所の体制を強化していく必要性が大きいと申し上げるものです。相続問題などで解決が遅れているケースへの専門家によるコンサルティング体制の整備も重要です。これらの提言についても前向きに取組んで頂きたい。

 以上、何点か指摘をさせて頂きました。本条例が京都市活性化に資するものとなるようにとの期待を表明し、賛成討論といたします。ご静聴ありがとうございました。

(季刊「自治体法務研究2014春号」で、北村喜宣上智大法科大学院教授が、京都市の空き家対策条例を高く評価し、「全国300近い自治体で制定されている空き家対策条例の到達点を示している」と記してくださっています。条例の本文をご覧になりたい場合は、こちらをクリックしてください!)


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