平成24年(2012年)8月16日 ホテルグランヴィア京都
※公明党の政令市議員団5都市(京都・大阪・神戸・横浜・名古屋)が切磋琢磨して政策を研さんする研究会の第20回目が京都で開催され、京都市の「防災・減災ニューディール政策」について、議員団の代表として発表しました。
【はじめに】
こんにちは。京都市会議員団の吉田です。京都市の防災・減災の取り組みを紹介させていただきます。発表に先立ち、ここ数日の京都南部の集中豪雨被害に対してご心配とお見舞いを頂戴し、心より感謝申し上げます。
緊急で市の上下水道局と建設局の担当者と連絡を取ったところ、市内では大きな被害は無かったとのことですが、大雨で側溝から雨水が溢れて道路が川のようになる「都市型水害」についての対策や、今まで考えられなかった中小河川の決壊についての予防対策は、今回の宇治市などの大規模な被害を受けて、改めて想定しなければならないとのことでした。市民の命を守る社会インフラ整備の重要性を改めて痛感した次第です。
公明党が掲げる「防災減災ニューディール政策」は、10年間で100兆円の集中投資を実施するのですが、国の予算を都道府県・政令市で割り振ると京都市は約1%です。本市のインフラ整備として各局から上がっている施策である「上下水道老朽化対策」「建物耐震補修」「橋りょう修繕」「地下鉄耐震推進」「学校避難場所充実」などのここ5年から10年の事業予算を合算しますと、約6,000億円から1兆円になり、まさに党中央が打ち出した「100兆円」という数値は妥当であると申しあげるものです。
本日は、これらの事業のうち「京都らしい」と思われる3つの事業をご紹介いたします。
【いのちを守る橋りょう健全化プログラム】
まず、「いのちを守る橋りょう健全化プログラム」についてです。この「いのちを守る」というネーミングですが、私たちの政治理念・思想とジャストフィットしていると思います。京都市は、これ以外にも「価値を創造する」という文言を多くの政策の理念に盛り込むなど、公明党の“エキスをちりばめている”のが、大きな特長であると、勝手に(?)確信しております。
京都市建設局は「いのちを守る橋りょう健全化プログラム」と「橋りょう長寿命化修繕計画」を平成23年12月に策定しました。これは、平成20年から3年越しで市内2m以上の橋りょう2,773橋のうち、橋長15m・緊急輸送道路・跨線橋・跨道橋でピックアップした680橋を総点検したうえで、具体的対策をプログラム化したものです。
国交省要綱に準拠した健全度を調査したのですが、「A:損傷がほとんどなく、老朽化修繕は不要」の橋は、125橋(18%)。Bは2つに細分化しており、「B1:一部損傷あるが、直ちに老朽化修繕は不要」は168橋(25%)で、「B2:損傷あり、老朽化修繕の実施が望まれる」が122橋(18%)。そして、「C:損傷が比較的大きく、早期に老朽化修繕が必要」が最も多く、265橋(39%)でした。幸いなことに「E(緊急の頭文字):損傷が著しく、緊急対応が必要」は1つも無かったとのことです。
これに対して、今後5年以内に51橋の工事を着工するとしました。その内訳は、老朽化により修繕が急務な244橋のうち34橋と、耐震補強が必要な52橋のうち17橋というものです。その中でも、平成24年度予算では約11億を計上。これはここ2年(22,23年度)の2倍以上に拡充しています。
健全化プログラムでは、今後5年間に150億円の予算を予定し、上記51橋の工事を完了するとともに、6年目以降に完了する見通しの7橋の工事着手、そして残りの約2,200橋の徹底点検をすすめていくと発表しています。
ここで特徴的なのは、長期ビジョンに立っているということ、そして1つ1つの橋をグループ分けして、明確な計画としていることです。
京都市としては、国が思い切って「防災・減災」に特化した公共インフラ整備の予算を増額したら、このプログラムも前倒しして迅速かつ拡大して推進する計画であるということでございます。
【まちの匠の知恵を活かした京都型耐震リフォーム支援事業】
次に、耐震リフォーム支援事業についてです。
京都市では、従来の「耐震改修事業」は不振で、ほとんどの年で目標に達していませんでした。ところが、今回の事業は大好評でして、予想を大きく上回るという、久々のクリーンヒットになったのです。
受付初日の4月20日には100人が行列を作るなど、まさに殺到といってよい状況でして、GW後も減ることなく、6月8日に当初の目標である500件に達して、受け付け終了となりました。
予想をはるかに超える速さで終了したので、多くの方が涙を飲み、追加募集を求める声が数多く寄せられました。そこで、9月議会で補正予算を組んで、10月中旬から再募集する予定にしております。各会派の議員団から、財源の一部に議員報酬削減分を活用するべきであるとの提案があり、執行部と協議して実現する見通しになっています。
また、特筆すべきことは、「地産地消」を重視して、施行業者を市内に限定したということ。これも市内で有意義な連携が促進された要因ではないかと考えています。
ここで、予期せぬ応募増になった理由を分析してみました。1つめは、東日本大震災を機に、市民の皆さんの防災意識が高まったことが挙げられます。
2つめは、昨年夏から、行政と地域団体、業者が連携して「耐震ネットワーク」を組織し、綿密に準備を積み重ねたことです。業者からのクチコミと、地域ぐるみの回覧板活用、そしてローラー作戦なども実施して拡大したことが功を奏したと思います。
3つめは、ネーミング等に工夫し、広報に力を入れたことです。「まちの匠」や「京都型」という文言は、わが街にこだわりとプライドを持つ京都人の琴線に触れたということではないかと考えます。
そして4つめは、ラインナップをきめ細かくし、複数メニューの組み合わせを可能とするなど、リーズナブルでお得感を促進したことです。
これまで、手続きが煩雑で時間がかかった点を改善し、申し込みの書類なども簡便化したことなどで、実際の工事着手が飛躍的に早まったので、まさにクチコミで広がっていったということです。
市民目線を重視したら、施策の実効性が大きく前進することが立証された事例であると思います。
【歴史都市京都における密集市街地対策】
最後に、密集市街地の防災対策についてです。
京都市は大きな戦災に遭っていない歴史都市であり、4m未満の細街路が集中する木造密集市街地です。この密集地は、面積2,086haで全住宅の22%にあたる約16万戸に及んでいます。
市内の細街路(941Km12,960本)のうち、1.8m未満は26.4%の3,400本あります。この「1.8m未満」は、建築基準法で「建て替え不可」とされており、空き家が老朽化して危険家屋になること防ぐためには、大きなハードルになっています。また、袋路も多いことが特徴であります。
町家が立ち並び、町衆のコミュニティが息づく京都ならではの風情を守ろうとする保守的気風もあって、従来型の拡幅整備に基づいた事業は進捗しませんでした。
しかしながら、近年では、地震等の災害時に避難や救助に支障をきたすとともに、延焼拡大につながってしまっていいのかという問題意識から、「災害に強いまちづくり」が大事であると再認識され、市民からの関心が高まっています。
そこで、京都市は全国一律の「再開発型」志向ではなく、歴史と文化を重視した「修復型」のまちづくりが重要であるとの見解のもと、市の建築審査会の提言を契機として本年7月に密集市街地対策の指針を策定したというものです。
具体的には、細街路の特性に応じて3種(歴史細街路・一般細街路・特定防災細街路)に分類したうえで、モデルケースとして市内の11学区を重点密集市街地として選定。そこで、地域ぐるみを重視して周辺の調査や住民の声を集約する作業を実施する計画です。
この事業は、平成24年度から4年という長期ビジョンであり、同時に28年度以降も視野に入れて推進するということが特長です。
もう1つの特長は、地域ぐるみであるということ。「地域の合意」を重視することで、「1.8m未満」の細街路に面した建築物の建て替え問題の前に立ちはだかっていた大きなハードルについても、建築審査会の合意があれば可能であるとの基準を活用するうえで、大きな追い風になるというわけです。
今まで、「密集地の防災対策」「空き家防止対策」がなかなか進まなかったのですが、今回の指針によって、一歩踏み込む方向へ舵を取ることになりました。私たち公明党議員団が繰り返し議会で取り上げ、地道に着実に議論を重ねてきたことが結実したものと自負しています。
以上、3点の防災減災施策をご紹介いたしました。これからも、現場第一で市民の“生の声”を受け止め、実情にあった施策推進を重視し、取組んでまいります。ご静聴ありがとうございました。
(各政令市の発表も充実し、お互いが刺激しあうものでした。国会議員も竹内ゆずる京都府本部代表と、遠山清彦地域主権型道州制PT座長が参加。有意義な研究会となりました)