吉田たかお演説集

市民スクール21「防災知っ得講座」

平成24年(2012年)7月14日 北支援学校生活学習室

※上京区成逸学区の女性会が定期的に開催されている「市民スクール21」に招かれ、『知ってますか? 京都市の防災対策』とのテーマで講演。緊張しましたが、誠実に謙虚に地域ぐるみの防災を語らせて頂きました。
 

【ごあいさつ】
 みなさん、こんばんは。京都市会議員の吉田たかおでございます。

 本日は、京都の地域コミュニティのトップランナーを走る「せいいつ方式」で有名な成逸学区女性会の皆さんの勉強会にお招きいただき、大変に光栄に存じます。心より感謝申し上げます。

 また、雨模様にもかかわらず、このように50名以上の方々がご参集下さったとお聞きしています。まさに紅一点ならぬ“黒一点”ということで、非常に緊張しておりますが、心からの感謝をこめて、京都市の防災と危機管理についてお話をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 

【自己紹介】
 さきほど少しご紹介いただきましたが、私は本年度、京都市会のまちづくり委員会に所属し、防災・減災の社会インフラ整備や、通学路・細街路の安全対策、自転車走行環境などの重要な政策課題を担当させていただいています。

 また、この4月までは交通水道消防委員会という、防災・防火・危機管理・ライフラインなどを担当する常任委員会の委員長として活動し、東日本大震災を受けて「防災総点検」を推進させて頂いていました。

 本日は、防災危機管理室の担当者と共同で制作したスライドを元に、これらの取り組みと今後の重要なポイントについてご紹介いたします。

 市会議員という立場ではございますが、特定の政党を宣伝したり批判するようなイカガワしい発言は一切いたしませんので、どうぞご安心ください。
 

【私たちのまち】
 私たちの京都は、1,500年以上の歴史を誇り、連綿と現代に継続している世界有数の歴史都市です。

 自然災害の観点で分析しますと、雨の量は全国平均よりも少なく、風の影響も海岸部の半分程度です。海から遠いので津波の被害を想定する必要もありませんし、近くに火山が無いので噴火の心配もありません。

 しかしながら、水害には何度も見舞われています。20世紀だけでも、1934年の室戸台風や1959年の伊勢湾台風などの大型台風で大きな被害を受け、1935年の京都大水害では鴨川が氾濫して三条大橋なども流されています。

 また、京都盆地は複数の活断層で形成されており、地震が頻繁に発生していまして、過去には巨大地震に何度も直撃されています。

 1185年にM7.5、1596年にM7.2、1662年はM7.5、そして1830年はM6.5の規模の大地震です。注目するべきは、直近の大地震から約200年近い年月が経過していることです。つまり、いつ巨大地震が発生しても不思議ではないということなのです。

 上京区は、京都市でも高齢者の割合が高いことはよく御存じと思いますが、同時に木造建築物が密集している地域です。幅が4m未満の細街路が多い中で、建築基準法では道と見なされない1.8m未満の路地や突き当たりの袋路の割合も多いという特徴があります。

 と言うことは、家屋の倒壊による被害が甚大であること、出火時に延焼して大規模火災になってしまう危険が高いことが容易に分かります。そのうえで、災害弱者と言われる方々の安否確認と避難誘導を迅速かつ的確にできる仕組みの構築が喫緊の課題であると申しあげるものです。
 

【東日本大震災を受けて】
 昨年3月11日に発生した東日本大震災は、日本人の価値観を一変させたと言っても過言ではないでしょう。三陸沖130Km付近の深さ約24Kmを震源とするM9.0という未曽有の大地震で、死者・行方不明あわせ約19,000人が犠牲になりました。

 岩手県宮古市で40mを超える津波が押し寄せるなど、多くの街が跡形もなく流されて、現在なお瓦礫が山のように積まれている状況です。

 福島原発事故も、重く大きな問題です。「放射性物質」「内部ひばく」「風評被害」という言葉が、毎日のように飛び交っており、不安に煽りたてられたヒステリックな感情論が爆発するなか、政府や東電の情報操作への不信が沈澱しています。本質を冷静に見抜く力が求められていると思えてなりません。

 今回の大震災の特徴は、広大な地域にわたったこと、地震・津波・原発のトリプルパンチに見舞われた複合災害であることですが、その中で重大な課題が浮き彫りになりました。燃料不足や通信の遮断、輸送路確保が困難であったこと、帰宅困難者問題や長期の避難生活の支援などです。他人事ではありません。全ての自治体が我がことと受け止め、取り組んでいかなければならない重要な課題ではないでしょうか。
 

【京都市の取り組み】
 京都市は、当日のうちにヘリ1機と消防車両28台、計110名を緊急派遣するなど迅速な手を打ち、3月14日には市長を本部長とする対策本部を正式に立ち上げました。現在に至るまで切れめなく支援を継続しています。(ここで、京都市HPの被災地支援記事に記載の項目を紹介しました)。

 職員の派遣、救援物資等の物的支援とともに、被災者の受け入れも充実し、きめ細かな支援を進めています。

 それとともに、わが京都市の安心安全のため、衆知をあつめた「防災総点検委員会」を結成。短期集中的に緊迫した議論を重ねました。この総点検委員会の特徴は、4つの検討部会に細分化し、専門家を結集して具体的議論を徹底的に戦わせたことです。

 4月に結成してから、8月に中間報告、12月には最終報告という、かつてないスピードで膨大なテーマを具体的にまとめあげたものでして、各分野の学識経験者やライフラインの事業者をはじめとする関係各位に敬意を表したいと思います。

 12月14日に提出された総点検委員会の最終報告は、今後取り組むべき130もの事業に言及しており、分厚い冊子が何冊も分けられていまして、京都市の財産と言っても良いくらいです。(ここで、京都のHPの最終報告記事に記載の内容を紹介しました)

 最終報告で明確にされた具体事業は、4つのテーマに分かれています。

 1つは『ひと』というカテゴリーで、「避難所運営」「防災訓練」「要援護者支援」「ボランティア」「コミュニティ」「観光客・帰宅困難者対策」の各事業です。

 2つは『情報・手段』で、「情報収集と伝達」「医療・介護・衛生」「廃棄物処理」「物資の調達と輸送」「防災教育」「就労」などです。

 3つは『もの』で、「住宅等の耐震促進」「道路や橋りょう等の社会基盤」「ライフライン」などです。

 それに加えて、『原発事故対策』も重点的に議論され、国や府の防災指針見直しを待つことなく、30km圏内を想定した計画を立てるよう綿密かつ大胆に提起しています。

 もう1つあります。「想定外」という言葉が定着した事を受け、京都市として地震被害について、綿密に再想定しました。

 内陸直下型地震の可能性を8つの断層すべてで分析しましたが、6つが死者予想1,000人以下、多くて桃山〜鹿ケ谷断層の2,200人なのに対し、花折断層は突出しており、5,400人の死者と117,800棟の全壊家屋を数えるとのこと。

 最大震度は上京区でも「6強」の予想です。気をつけなければなりません。液状化の心配は全くと言ってよいくらい無いのですが、火災被害の想定は東山と並んで最も高いと予想されています。
 

【自助・共助・公助】
 京都市が呼びかけている防災対策の基本理念は、「自らの身の安全は自らが守る」「自らのまちは自らが守る」というものです。

 そして、「自助(セルフサポート)」と「共助(コミュニティサポート)」そして「公助(パブリックサポート)」が、お互いに偏ったり依存し合ったりするのではなく、情報を共有し役割分担して協力していくことです。

 そのためには、人としてお互いの存在を認め合い、いざと言う時に助け合える「つながり」を日常から深めていく努力が不可欠であると申し上げたいのです。

 災害から生き残り、生き延びるためには、頼りになるのは「ご近所」です。住んでいる我がまちに愛着を持ち、日常的に地域の活動に参加していく、心の通ったまちづくりが大事です。

 その意味では、冒頭に申し上げたとおり、京都市の地域コミュニティのトップランナーである成逸学区の皆さんが、市民ぐるみの防災・減災対策のお手本的な存在となって、各区をリードしていただく立場であることは間違いないのではないでしょうか。

 京都中の心ある方々が皆さん方のご活躍に注目されていると、改めて申し上げまして、私のお話を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

(多くのご質問を頂戴し、和やかながら有意義な語らいとなりました。公明党が作成した「災害時あんしんシート」が好評で、学区内の高齢者宅訪問時に手渡しされるとのこと。防災・危機管理の充実のため、努力を重ねようと改めて決意しました)


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