吉田たかお演説集

ライオンズクラブでスピーチ

平成23年(2011年)12月1日 全日空ホテル

※日ごろ地域貢献でお世話になっている「朱雀ライオンズクラブ」の例会で、自転車安心安全条例の制定についての書籍や閉塞する政治状況への見解等についてスピーチさせていただきました。
 

【ごあいさつ】
 みなさん、こんばんは。京都市会議員の吉田孝雄でございます。本日は光栄にも、ライオンズクラブの例会でお話をさせていただく機会を与えてくださり、非常に緊張しております。

 この秋より、皆様とご縁を結ばせていただいて、11月23日に行われた上京区の子どもまつりをはじめ、様々な奉仕活動に参加することができました。心より感謝申し上げます。今後ともご指導いただきますよう、お願いします。
 

【自転車条例の書籍が発刊】
 さて、今回スピーチさせていただくことになったのは、このほど私が執筆した書籍が出版されることになりまして、その報告をさせていただいたところ、例会の場で内容を紹介してはどうかと提案していただいたという次第でございます。

 書籍と言いましても、いかがわしい「暴露本」なんかではなく、れっきとした政策の本でございます。最近いろんなメディアで自転車の安全対策や走行マナーが毎日のように紹介され、クローズアップされていますが、実は2010年の秋、自転車交通安全の問題に対して、市民や行政、業者や商店街、地域が力を合わせ、役割分担してルールを明確にした条例、「京都市自転車安心安全条例」を、約1年がかりで文字通り1から創り上げて、成立することができました。

 これが100年を超える京都市の歴史で初めての「議員立法」であるということで大変に注目されまして、東京の地域科学研究会という研究機関いわゆるシンクタンクが東京都千代田区で開催したセミナーに講師として招待されてお話したのですが、ありがたいことにそれが好評とのことで、今回1冊の本としてまとめることになったものです。
 

【自転車の事故が急増】
 自転車の関係する事故が、この10年で約3倍にも増加し、死亡事故の割合が目立って増えてきています。京都でも様々なキャンペーンが行われるなど、対策がすすめられているなかで、昨年3月に「歩くまち京都」交通戦略が策定されました。こうした機運の中で、市民の皆さんから寄せられるご相談の中でも、自転車に関するトラブルも増えてきていました。

 ご承知の通り、自動車には保険がありますので万が一事故を起こしても、保険屋さんが間に入って代理人という形で交渉してくれますが、自転車の保険に加入している人はほとんどいません。

 そんななか、「商店街の路上や歩道の上を猛スピードで走る自転車が怖いです」といった声が寄せられたり、自転車に乗っていて車と事故をして被害者になってしまったが、相手方の代理人がプロなのでこちらが不利なのかどうか全くわからない―といった内容のご相談もありました。

 自転車保険に加入している人は、特に京都では全国平均よりも半分くらい少なく、TSマークという簡易型保険の制度の加入率は何と1%。横浜では女子高生が自転車で歩行者を跳ねて障害が残った事故の裁判で、5,000万円の損害賠償の判決が出たのです。被害者も加害者も「地獄」と言っても過言ではなりません。

 私の知人が歩道を歩いていて、後ろから猛スピードの自転車に追突され、首から下が動かないという重度の障害者になってしまったという痛ましい事故もありました。これは他人事ではないと思います。

 自転車保険制度が今以上に浸透することは非常に大事ですので、行政も業者も他人任せにするのではなく責任を持って協力に推進するべきであると、条例に入れました。

 それだけではなく、マナーを小さい頃から徹底するためにも、学校における交通安全教育は重要です。しかし、小学校では9割以上が実施しているものの、中学では約半数程度しか実施されておらず、こうした実態を改善しなければなりません。そこで、各世代の実情に合うカリキュラムを教育課程にしっかりと組んでいくよう義務づけることを条例に明記したのです。

 また、商店街の安全対策に行政が強力に支援するようにも条例で定めました。商店連盟の方々とも、先日意見交換会を行いましたが、皆さん条例に基づいた施策の推進に期待していただいていました。

 テレビ報道によりますと、自転車が歩道を走ったらアカンと警察が取り締まりを強化するらしいですが、それだけでは車道を走る自転車の危険を防ぐという大事な点が抜けてしまいます。マナー向上と同時に専用レーンなども予算をしっかりと確保するべきであり、こうした点も踏まえ、条例制定にあたってしっかりと法整備をしたところです。
 

【議会改革への想い】
 以上、るる自転車条例について申し上げました。このように、政策を立案して、条例というカタチで、オリジナルで作り上げた理由は何かと申し上げますと、実は現在の地方自治体の議員のあり方に、強い危機感があったからです。

 今までは、議員は条例を創れ作れと主張するだけで、結局のところ具体的な政策立案は行政に任せきりでした。予算案などに対しても、極端に言いますと与党は何でも賛成で、野党は何でも反対――と批判されてきました。

 最近になって、名古屋市や大阪で、強烈なキャラクターの市長が、「議会は行政の言いなりで自ら汗をかこうとしない。口ばかりで実際は勉強していない。こんな役に立たない議員ばかりなら、ボランティアで十分である」等々と主張し、議員不要論が嵐のように吹き荒れています。

 そして、このような事態に対して、議会側から出される意見は、「定数削減」「報酬削減」といった、ダンピング合戦みたいなものがほとんどです。もちろんコスト削減は重要と考えますが、私は、果たしてそれだけで良いのかと強い違和感を持ちました。議員同士が丁々発止の議論を展開して、市民の生活実感に即した政策を創りあげていくことが、市民が求める議会の在り方ではないのかと模索しました。

 そして、議会が今までのような「何をやってるのかさっぱりわからない」ような不透明なままではなく、市民から見える存在に生まれ変わっていくことこそ、本当の議会改革であると確信して、様々な議論を展開しています。

 その“うねり”を起こす第一歩として、政策条例を議員提案させていただいた次第です。嬉しいことに、こうした取り組みに対して、他都市の議員さんが大きな関心を示され、今までに10を超える自治体が視察団を結成されまして、はるばる京都まで勉強しに来られています。私も時間の合間を縫って説明させて頂いています。
 

【時代の転換期】
 これからの時代は、大震災の後をうけ、「災後」という時代の転換期、大激動期に突入したと思います。旧態依然とした一極集中の中央集権ではなく、地域の創意工夫が生かされるクリエイティブな地方分権が求められていると実感しています。

 厳しい財政をどう再建するか、限られた予算をいかに市民生活のために生かす政策に仕立てるか、防災・危機管理・福祉・中小企業支援・地下鉄赤字解消などなど、京都市の方向性を導く舵取りはますます重要になっています。市民参加や市政の透明性を促進し、市民の皆さんから信頼される議会になっていくため、コツコツと地域に根を張って、頑張っていこうと決意しております。

 先日行われた大阪のW選挙では、世界の大都市に伍しても引けをとらない関西を構築するとの将来ビジョンのために、二重行政や縦割りの弊害を改革すると訴えた大阪維新の会が圧勝されました。

 中央集権から地域を重視した地方分権との方向性は大事であり、大いに共感しています。橋下市長の桁外れの発信力も、誰も見ていないところで猛烈に勉強しておられる賜物ではないかと感心しています。しかしながら、反対する人や慎重な人を「規制の既得権益に固執している」と決め付けて攻撃しておられるやり方については、どうしても危惧してしまいます。

 どんな物事でも、利害調整や合意形成は重要なのは皆さんよくおわかりと存じますが、これを無視するような強引な手法がまかりとおると、行き詰まってしまうのではないでしょうか。その点が残念であり、心配な部分なのです。

 劇場型政治のポピュリズムでは、「公共事業」とか「官僚」とかを悪玉に仕立てて、徹底的に駆逐します。いっときは溜飲を下げるかもしれませんが、興奮が醒めた後は、「無責任」極まりない政局の混乱が続くだけでは、市民にしわ寄せが来るだけではないでしょうか。

 私が、いま心がけていることは、無党派の風に右往左往するのではなく、「あの人は地域の為に地道に動いたはる」「あいつは真面目で、仕事が速い!」と口コミで認めていただけるよう、誠実に謙虚に草の根で頑張っております。何党がどうとかこうとかではなく、1人の人間として信頼にお応えできるかどうか――これを自らに言い聞かせています。

 まだまだ未熟で、ご心配とご迷惑をおかけしますが、今後とも宜しくお願いいたします。貴重なお時間を頂き、心より感謝申し上げます。ありがとうございました!

(終了後、会員の方々と親しく懇談。社会の第一線で活躍される先輩方との意見交換は、大変に勉強になりました)


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