議会質問集

平成19年普通決算特別委員会総括質疑

平成19年(2007年)12月5日 京都市会第2会議室

※当選1年目の決算委員会では第1分科会に所属して、文化芸術や教育、市政広報などを議論。市長や副市長に直接に訴える総括質疑では、2月に退任する桝本市長に公明党議員団を代表して質疑しました。

【京都市HPに市長への手紙を公開】

◆吉田孝雄委員
 桝本市長、3期12年間の御奮闘お疲れ様でした。公明党最後の質問を、くしくも北野中学の後輩である私がさせて頂くこととなりました。桝本市政を受け継ぎ、より発展させていくとの決意を込めて、何点かお聞きしたいと思います。

 まず、市民に迅速かつ的確な情報を提供する広報戦略の在り方について質問致します。市民参加のために情報公開に力を入れた桝本市政の集大成として、このたび京都市公式ホームページを全面的にリニューアルされました。今年行われたある調査で、京都市のホームページが全国の自治体で第3位にランクされたという発表がありました。関係各位の努力が報われたものであり、誇りに思うとともにうれしさで一杯であります。

 私自身、21年間コンピュータソフトの営業マンとしてITの最前線で仕事をして参りました。ビジネスの世界では、名刺交換したその日のうちに相手の会社のホームページを確認することは常識となっています。自治体でも同じです。学生だけでなく、サラリーマンや主婦の皆さんも、我が街の顔として京都市ホームページを注目しておられます。最新の情報発信のため、広報戦略をますます充実させていくべきであると訴えたいと思います。

 そこで問題提起したいのは、他の都市で見られる「目安箱」的な機能を本市でも力を入れるべきではないかということであります。「市長への手紙」というコーナーがありますが、残念ながら一方通行でして、要望や提言が紹介されているだけで、それへの回答が公開されていません。ホームページの特性から考えても、自分が発信した公の課題に対して自分一人だけに回答されるのではなくして、より広く公開される方が望ましいと考えている方も多いのではないかと思います。

 個人情報との絡みもあるかもしれませんが、書き込む際に「公開してもよい」という意思確認を入れておけばクリアできるのではないでしょうか。市民参加・情報の双方向化という観点から、必要と思われる提言に対しては回答を公開するというような感じで市長への手紙の機能を充実強化させてはいかがでしょうか。この点に関しまして御見解をお聞き致します。

◎桝本頼兼市長
 市長への手紙がテーマでございますから、私から御答弁申し上げます。「市長への手紙」は、市民の皆様の市政への参加を図り、開かれた市政をより一層推進するとともに、政策や施策の更なる充実に資することを目的に、市政全般に対する様々な御意見・御要望等を、封書又はインターネットで頂戴する制度でございます。

市長への手紙に頂いた御意見・御要望に対しましては、差出人にお返事をするとともに、頂いた手紙の意見の中で可能なものから市政に反映するように努めております。

 意見の公開についてですが、「市長への手紙」制度の趣旨を充実する観点からも大変有意義であると考えております。建設的な御意見・御提言等はホームページ等において、御同意が得られたら積極的に公開するよう検討して参りたいと思っております。

 なお、本市のホームページ担当者の努力が報われて、全国第3位ということで、大変喜んでおります。私どもも、「もっともっと頑張ってほしい」と激励しているところでございます。以上でございます。

【文化芸術施設のバリアフリーとHP充実】

◆吉田委員
 私自身、汗で稼ぐ、いわゆるフィールドワークを重視しています。今月も京都会館、芸術センター、美術館、歴史資料館、考古資料館を訪れて、文化芸術振興のため、現場の空気を吸って勉強させていただきました。

 そこで実感したのは、老朽化への対策をしっかりと取り組んでいかなければならないのではないかという点です。具体的には、バリアフリーの段階的取組とトイレ等の改修について、どのようにお考えでしょうか。これが1点目。

 2点目は、「ハコモノ」が無用の長物となっている実態が指摘されている今こそ、ソフトに力を入れることしかないと実感しています。具体的には、京都が誇る歴史や文化の遺産を有しているこれらの各施設におけるオリジナルのホームページについても、中身を今以上に充実していくべきではないでしょうか。

 例えば、魅力的な特別講座やシンポジウムが開催されていたわけですけれども、それが終了すればそれっきりで終わっており、もったいないと思います。配付された資料を、期間中に鑑賞できずに終わってしまった市民の方のためにデジタル化してホームページにアップするということは技術的には不可能ではありません。

 手間は掛かるかもしれませんが、京都の魅力を発信し、若い世代へのPRと観光客を拡大する戦略の両方から見ても、これら文化資源のホームページの発信事業は大きな大きな可能性を持っていると確信します。京都活性化のため、長期的視野に立って広報戦略の具体的推進について前向きな御検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

◎星川茂一副市長
 2点、お尋ねと御提案をいただきました。1点目の老朽化した文化施設等のバリアフリー化、またトイレの改修という点でございます。私ども、今年の3月に文化芸術都市創生計画を策定致しましたけれども、その中でも文化施設のユニバーサルデザイン化というのを一つの大きな目標に掲げておりまして、文化芸術都市として多くの方に御来場いただいて文化芸術に触れて頂くということが大切だということで計画に入れているわけでございます。

 御指摘の京都会館、美術館等は、本当に老朽化を致しておりまして、少しずつ改善は致しておりますけれども、まだまだ不足しております。京都会館については、現在「再整備構想」を視野に入れておりますので、その中でこういう問題を考えていきたい。

 美術館につきましても、高温高湿設備等もすぐやっていく必要がありますので、重点的な改修計画を立てて、その中で対応していきたいと思っています。そのほかの施設についても、大変財政上厳しいですけれども、文化芸術都市京都にとって中核施設でもありますし、京都創生にとっても非常に大事なことでございますので、計画的な改修対応をしていきたいという風に思っております。

 それから、2点目のオリジナルホームページ。これは正にそのとおりだと思っています。やはり何か関心がある人は、必ずホームページがあるかどうか見るという風に、私もそう思っています。この間、美術館やらを含めまして、随分ホームページの改善はされていますけれども、先生が御提案して頂きましたような、事業の中身のアップまではなかなか出来ていないというのが実情でございますので、そういう点についても、できるだけ前向きに取り組めるように指示して参りたいと思っております。

【ネットいじめ対策】

◆吉田委員
 大いに期待をしたいと思います。毎日ホームページを見ている者として、今後も見守っていきたいと思います。

 次に、深刻化するネットいじめの問題についてお聞きします。以前から、メール依存症やネット依存症が指摘され、インターネットや携帯電話を使う子供たちの心の闇が懸念されております。

 特に今年になってからは、「学校裏サイト」などのパソコン掲示板において「ネットいじめ」という、今までにないタイプのいじめが深刻化しています。匿名を隠れみのにした誹謗中傷や、わいせつ画像が入り乱れているのですが、本市においても幾つか教育現場からも実例が報告されており、本格的な対策を多角的に講じるべきであると考えます。
 
 今日の昼休みに、「朝日ドットコム」のニュースが配信されていまして、アメリカでも「ネットいじめ」が急増しているというような報告が公表されているということでもございます。またイギリスでは、多額の予算を使って、この対策を国家的に取り組んでいるということでございます。
 
 本市においても、先日京都アスニーで開催されたセミナーにおきまして、会場からあふれるぐらいの保護者の皆さんが詰め掛け、関心の大きさを再認識した次第でございます。

 様々な本を読んで、かつ先駆的な教育者に取材するなど、色々と研究したうえで、今必要であると思うのは、まず国レベルでの法規制でありますが、次に重要なのは、子どもへネットエチケットを教育する、いわゆる情報モラル教育のカリキュラム充実と保護者への啓発であります。

 保護者や教員を含め、まだまだ危機意識が少ない大人が多すぎます。京都の宝である子どもたちのため、ネットいじめの徹底した取組を是非お願いしたい。教育長出身でもあり、子どもたちの未来を誰よりも真剣に考えておられる桝本市長に、全国をリードする「ネットいじめ」対策を早急に取り組んでいただきたいと思います。いかがでしょうか。

◎上原任副市長
 教育委員会におけるこれまでの取組でございますけども、まず一つは、PTAや校長会等と連名で、出会い系サイトから子どもを守ろうとの緊急アピールを発信しました。そして、全国に先駆けまして、学校や家庭での「インターネット活用指針」を作成し実践してきました。このように、保護者の啓発と児童生徒の情報モラル教育を第一に充実してきているところであります。

 2つ目は、今年10月に小学校4年生から高校3年生までの全児童生徒を対象に、携帯に関するアンケート調査を実施しております。3つ目が、11月に新たに、PTAと人づくり21世紀委員会、警察と携帯電話会社などが参画する「子供の携帯利用に関する連絡会」を新しく立ち上げまして、この連絡会が京都市の総体の取組としてこれからも活動していく、こういう動きを進めてきているところであります。

 そして、これからどうするのかという点です。目標は、子どもに有害情報を受けたり発信したりさせない、つまり、被害者にも加害者にもさせない。そういった社会を作ろうということが目標でありますけれども、先ほどの連絡会から、「携帯の危険から子供を守る」との緊急行動アピールというものが近く発信されます。

 併せて、先ほど言いましたアンケート調査の結果が出てきます。これらに基づいて、一つは児童生徒への指導の徹底、二つ目が保護者対象の学習会の開催、そして三つ目が、携帯電話販売店の協力体制の構築などを通じて「フィルタリングの徹底」です。

 また、子どもにインターネット機能付き電話を持たせない、こういった社会的な機運を醸成していこうということでありまして、法的規制の強化を、関係のいろんな機関や団体と共に、国に対して要望しようといった風に、社会総掛かりで取組を進めて参ろうというのが現在の、あるいは今後の取組でございます。以上でございます。

【データベースとセキュリティ対策】

◆吉田孝雄委員
 子どもたちのために、是非よろしくお願い致します。さて、平成18年度に大きく前進した学校のネットワーク構築、いわゆるLAN整備でありますが、現在8割を超える現場で活用されているとお聞きしました。私は、次のステップとして、生きた情報を生かすためのデータベース化とセキュリティの対策に力を入れるべきと訴えたいと思います。

 優れた教育カリキュラムが京都市総合教育センターに保管され、それをいつでも研修できるとなっていますけれども、これをデジタル化していけば、わざわざそこまで行かなくても、学校や自宅で検索できます。この「データベース事業」を第一歩としていくことによって、将来的には、先ほど取り上げた情報モラル教育の成功事例であるとか、モンスターペアレンツと言われる理不尽な親から苦情を付きつけられた場合の具体的対応の事例といった貴重な情報を、学校など今いるその場で呼び出すことができる。こういう可能性も大きく拡大すると思います。このデータベースでの情報の共有化は喫緊の課題と思いますが、いかがでしょうか。

 そして、最後ですけれども、このITの強化は実はセキュリティの面でも大きな効果を発揮します。今の教員の方々は、自分のノートパソコンを学校に持ち込んでデータを打ち込んでいるケースが多いと聞いています。メモリースティックでデータを持ち運びしては、紛失したりウィルス感染したりして個人情報が流出する危険から免れません。

 不幸にも紛失事故が発生したら、意欲も実力もある人材を処分せざるを得ないケースも出てくるかもしれませんので、このような事件や事故が起こって人的損失が余儀なくされるようなことを防ぐためにも、大型スーパーコンピュータをメインサーバーにして、各教員の机に端末を配置するサーバークライアントを完備していく計画を真剣に取り組むべきではないでしょうか。

 お金は掛かると思いますが、将来的には教員の自宅にもネットワークをつなげば、仮に端末が故障したとしてもデータは消えないですし、何よりも個人情報流出や紛失も起こりません。長期的視野に立ってデータベースの構築とサーバークライアントの完備という、この二つの事業についてご答弁をお願い致します。

◎上原任副市長 
 平成14年度から、すべての市立学校や幼稚園を結ぶ「光京都ネット」を教育委員会が運営しております。そして平成16年度からは、5箇年計画で構内LAN整備事業をこれまで実施してきたところでございます。当然でございますけども、この「光京都ネット」は、ネットワークによる事務効率化を図る一方で、セキュリティの対策にも万全を期して参っているというのが現状でございます。

 そこで、今後は情報漏えいなどの危険が伴うということもありまして、教育委員会では、このパソコン本体にデータを保存しないよう学校に常々から指導しているところでありますけれども、「光京都ネット」でデータの漏えいを防ぎ、安全にデータ管理を行うということを目的として、データの記録場所としてネットワークセンター内にセンターサーバーを用意しているというのがこれまでの取組でございます。同時に、セキュリティの対策としては、ウィルス対策ソフト等の導入とUSBメモリ等の使用禁止の取組を実施して参りました。

 そこで、これからの取組でございますけれども、データの暗号化ソフトを導入していこうと検討しています。これは、漏えいの防止をより確実なものにするということが目的でございます。

 今おっしゃいました、パソコン内に一切データを置けないという新しいシステム、新クライアントシステムと言いますか、セキュリティのより高い最新のシステムの導入ということでありますけれども、これは聞くところでは大変高価な莫大なコストを要するという風に聞いてございます。

 ですから、今しばらくは今後の技術の革新を見極めながら、今後の将来的な課題という風にさせていただきたいという意味で教育委員会は臨んでいるところでございます。以上でございます。

(京都市HPの市長への手紙や、ネットいじめ対策など、年間を通して粘り強く継続した提言は、その後、具体的に実現することができました。1問1答の議論は長いですが、読みごたえがあるのではないでしょうか)