議会質問集

はじめての本会議代表質問

平成19年(2007年)5月28日 京都市会本会議場

※平成19年4月8日、京都市会議員に初当選させて頂き、最初の議会で会派を代表して質問に立ちました。選挙後の初議会に新人議員が質問することは、公明党京都市会議員団の伝統とのこと。大変でしたが、選挙中に訴えていた政策を掘り下げて研鑽し、先輩議員の叱咤激励やアドバイスのお蔭で、20分の質問を完成することができました。記念すべき初質問の原稿を掲載します。

≪質問≫
【はじめに】

 私は、上京区選出の吉田孝雄でございます。公明党京都市会議員団を代表して市政一般について質問致します。まず初めに、4月8日に行われた京都市会議員選挙におきまして、公明党から立候補致しました私ども12名全員が市民の皆様方の真心の御支援を賜り当選させていただいたことに対し、心より厚く感謝と御礼を申し上げます。

 また、全国でも4年前に続いて全候補者1,724名の完全勝利を勝ち取るという金字塔を打ち立てることができました。党員・支持者の皆様の御期待に応え、現場第一で研さんに励んで、一つ一つ実績を積み、京都市発展に貢献していく決意でございます。

 特に、パフォーマンスが前面に出るバラエティー政治の横行に心ある方々が危機感を抱いておられる今こそ、我々公明党が力を発揮し、庶民の目線で責任ある政策を遂行する以外にないと、自覚を新たにしております。

 さて、ある哲学者は、「戦前は軍事競争の時代、戦後は経済競争の時代であった。21世紀は人道の競争をすべきである」と論じています。私ども公明党は、21世紀の日本が「文化・教育・平和」の分野で世界に貢献すべきであるとの信念から、京都市が文化芸術立国の首都を志すことに大いに賛同するものでございます。

 特に、「国家戦略としての京都創生」への本格的な正念場を迎える今、京都こそが日本の文化芸術の魅力を世界に発信していくための要であるとの確信に立ち、率直に質問させていただきます。市長並びに関係理事者におかれましては、誠意ある御答弁をお願い致します。

【源氏物語千年紀】

 まず、「源氏物語千年紀事業」についてお伺い致します。作家の瀬戸内寂聴氏は源氏物語について、「世界に輝く第一級の小説として千年の命を保ち続けている。もし日本の文化的遺産を一つ挙げよと言われたら、私はちゅうちょなく源氏物語を推すだろう」と述べておられます。

 現在、英語・フランス語・ドイツ語をはじめチェコ語やスウェーデン語、ヒンズー語など、実に20以上の言語に翻訳され、世界最古の長編小説として内外の読者に愛されている源氏物語は、まさに世界に誇る古典であると言っても過言ではありません。

 2008年が源氏物語の千周年ということで、京都府と京都市、宇治市等が中心となって千年紀事業が推進されています。1月の千年紀委員会設立を受けて4月には事務局が上京区に設置され、ウォーキングツアーや連続講座等のプレ事業を通して機運も盛り上がりつつあります。いよいよ来年11月が千年目であり、市民を中心に広く内外を巻き込んで大いに効果を出すと同時に、一過性で終わらない継続性のある取組にすべきであると考えます。

 先日正式に発表された源氏物語千年紀に向けての事業構想では、「京都、関西はもとより日本全国、そして世界の多くの団体・企業・NPO・個人の幅広い賛同と参画を得て」とあります。これは大変に評価されるべき構想であると思います。

 しかしながら、私は、この事業構想をより実効性あるものにしていくためには、市民と協働して作り上げるという市民参加の視点、子どもたちや若者へ文化を継承していくという次世代の視点、町衆文化の息づく地域コミュニティの視点という、いわば京都の市民の力が何よりも重要であると考えます。

 こうした文化を支える市民の力に基づいて、千年紀委員会と連携しながら市民から寄せられた具体的な企画や提案を協賛事業として弾力的に認定するとともに、公開オーディションを行うといった臨場感のある事業を展開するなど、具体策を積極的に打ち出し推進していくべきであると考えますがいかがでしょうか。

 また、源氏物語を研究している世界中の学者や文化人が京都に一堂に会する京都国際源氏物語シンポジウムの開催や、幅広い世代から支持を集め注目されている京都国際マンガミュージアムと連携した企画、さらに子どもたちが気軽に源氏物語に親しめるような「子ども版源氏物語」の製作や、草の根で研究しておられる在野の愛好家や市民博士の方々にも活躍できる場を提供するなど、多世代・多文化の取組みも重要な視点だと思いますがいかがでしょうか。市長の御答弁を求めます。

【京都文化芸術創生計画】

 次に、京都文化芸術都市創生計画についてお伺い致します。本市は、昨年施行された「京都市文化芸術都市創生条例」に基づき、3月にこの計画を発表しました。私は、壮大でバリエーションに富んだプランの中でも、特に文化芸術に親しみ、その楽しさを知る子どもたちの育成を重視したいと考えています。

 ハコモノ事業が無用の長物になっている事例が全国各地で見受けられる中、巨額の資金を投じた施設の建設や打ち上げ花火的なイベントを開催するだけでは、広がりと継続性のあるものにはなりません。

 京都創生のためには、子どもたちの豊かな感性をはぐくみ、無限の可能性を触発させていく取組みをいっそう推進するビジョンが不可欠ではないでしょうか。この観点から質問と提案をさせていただきたいと思います。

 本年から、京都にいる若手芸術家を学校に派遣して、子どもたちが優れた文化芸術の魅力に触れる特別授業を行う取組みが始まります。この事業について4点お尋ね致します。

 NHKの人気番組「課外授業ようこそ先輩」の文化芸術版とも言えるこの「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」ですが、今年度の実施予定が20校とお聞きしました。第1年目ということでやむを得ないのかもしれませんが、実施校をもっと増やすなど積極的な展開を考えるべきではないでしょうか。

 内容についても、事業を行う文化市民局と教育委員会とが連携し、市と学校と芸術家とが事前に綿密なやりとりを行い、アンケート調査を実施して子どもたちのニーズを反映した柔軟な計画を練っていくべきと考えます。いかがですか。

 また、実施に当たって、交通の便の良い地域以外になかなか行き渡りにくいという格差が発生しないかという懸念もあります。各区に満遍なく候補校をピックアップし、偏りのない実施計画を図るべきと思いますがいかがでしょうか。

 4つ目は、現在進めている「京都市芸術文化特別奨励制度」との連動であります。この制度で育成している若い芸術家やグループを是非この「ようこそアーティスト事業」に活用することを検討していただきたいと思います。いかがでしょうか。お答えください。

【第3子優遇施策】

 次に、少子化対策についてお伺い致します。少子化対策は、今や国民にとって喫緊の課題となっていることは誰もが認めるところであります。私ども公明党は、早くから児童手当や子供医療費の拡充など少子化対策に粘り強く全力で取り組んで参りました。もちろん、結婚も出産も個人の意思で自由に選択される時代であることは言うまでもありません。それを踏まえたうえで、働く環境や育児費用の増大などの理由でやむを得ずあきらめている方への支援も必要ではないかとの声も聞こえて参ります。

 平成16年に市内の子育て世代対象に実施されたアンケートで、就学前のお子さんを育てているご家庭に「子どもは何人欲しいですか」と聞いたところ、半分近い49.2%が3人と答えられました。しかしながら、実際の子どもさんの数は3人がわずか15%にとどまり、2人以下は81.2%でした。そして、理想の数よりも少ない理由の第1位は、58.1%の方が「経済的に余裕がない」と回答されたのであります。

 出生率の低下が懸念されている中において、唯一上昇した福井県でも京都市のアンケートと同じ傾向がありましたが、その対策として「ふくい3人っこ応援プロジェクト」という第3子への支援を実施したことが出生率の上昇に大きく貢献したと言われております。

 そもそも少子化対策は、すべての子どもに対してなされるべきものでありますが、3人目との視点は、子どもを産むことがより歓迎される風潮を生み出し、人口の増加にもつながるのではないでしょうか。当然、地域性の違いもありますので、福井県と全く同じ施策を実施することがベストとは思いませんが、子育て支援策の一つとして注目すべきと考えます。

 本年2月の衆議院予算委員会で厚生労働大臣が「妊産婦検診の公費負担について無料にする回数をまず5回を基準に」と述べたことを受けて、2月定例議会で我が党の井上教子議員が妊婦の無料検診の拡充について提案致しましたところ、上原副市長から「有効な子育て支援策の一つとして公費負担の拡充について検討する」との答弁がございました。

 現在、ご検討いただいているところとは思いますが、まずは第3子優遇支援策として、妊婦検診の5回分の公費負担による無料化を本年9月の子ども医療費支給制度拡充に併せて導入することを検討していただきたいと思います。いかがでしょうかご所見をお伺い致します。

【CAPプログラムについて】

 最後に、いじめや虐待への取組におけるCAPについてお伺い致します。子どもたちが、いじめ・誘拐・虐待・性暴力などから自分で自分を守れるように、持っている力を引き出すことの大切さを教える教育プログラム「CAPプログラム」の活動が各地で広がっています。

 CAPとは、「Child Assault Prevention」、すなわち子どもへの暴力防止の略称で、現在世界15箇国で実施されています。日本には1985年に紹介され、約100グループが活動しております。

 このプログラムのワークショップを学校の授業に採り入れ、児童生徒や教職員、保護者などを対象に実施した自治体では、実際に受講した児童から、「暴力やいじめへの対応方法を学ぶ中で、他人へ暴力を振るう愚かさと他者を大切にすることが、結局自分を大切にすることにつながると分かった」との共感の声が寄せられ、参加したことを高く評価している結果が出ております。

 京都市におきましても,平成16年に我が党の湯浅光彦議員の提案を受けて門川教育長がCAPを教育の現場に採り入れる方針を発表され、校長・教頭・人権担当等の教職員対象の研修会が開催されたことを契機に、北白川小学校・嵯峨小学校・音羽小学校・下鳥羽小学校ほか多くの学校でCAPプログラムが展開されるようになりました。

 関係者からは、教育長のご英断と公明党の提言に対して感謝の声が寄せられております。支援者の方と一緒に取材活動を重ねた結果、CAP導入による成果についてここ数年で著しい変化が見られているとのことであります。それは、CAPの目的が子どもへの暴力防止というハード面にとどまらず、最近はワークショップとヒアリングの成果として、家族や教師など身近で信頼している立場の大人からの暴力や虐待に苦しむ子供の心のケア、つまり内面にまでその効果が促進されてきているというのです。

 このCAPの理念と実践は、子どもの人格を尊重し理解して接し、声に出せない心の叫びに耳を傾ける「傾聴ボランティア」にも通じる非常に大切な普遍性があり、現代社会の底に沈んでいる病理を解決する可能性があるのではないかと私は感じました。是非とも、地域ぐるみで取り組み、普及していく価値があると申し上げたいのでございます。
 
 ただ、このプログラムの効果を出すには、学年単位ではなく1クラスごとの開催が原則ということで、少なからず費用が必要となります。したがって、PTA等からの支援がある学校では継続して開催されているものの、多くの現場では資金の余裕がなく意欲はあっても開催されないままの状態であります。

 その意味で、NPOの方や保護者のお母さん方からも、行政の支援を是非お願いしたいとおっしゃっていました。八幡市では、小学校1年生・4年生・中学3年生の授業に組み込んで、すべての子どもが学んでいくことができるシステムを確立しています。京都市で同じような規模の取組を進める場合、試算として2,000万円以上が必要と言われています。これはかなり大変であり、今すぐの導入が至難であることは理解できます。

 しかしながら、大阪市では昨年度に460万円の予算を組んで推進され、その効果が現れた結果、今年度の予算には1,600万円が組まれたのであります。京都市としてCAPの導入についてどのようにお考えでしょうか。

 全面的な予算化が困難であれば、段階を踏んで、まずパイロット校をピックアップして導入してはいかがでしょうか。また、現在はCAPの教職員研修は希望制でありますが、これをすべての教育者が学ぶ必須カリキュラムにしていくなど、意識の面からも思い切った変革を進めていくべきではないでしょうか。前向きなご答弁をお願い致します。以上で私の質問を終了致します。御清聴誠にありがとうございました。


≪答弁≫
【源氏物語千年紀事業】(桝本頼兼市長)

 吉田孝雄議員のご質問にお答え致します。「源氏物語千年紀事業」についてお答え致します。平成20に源氏物語1000年という大きな節目を迎えるに当たり、これを契機として源氏物語が宿す日本文化の奥行きの広さ、すばらしさを、全国、全世界に、広くそして後世に伝えることを目的に様々な事業を行っていくことにしております。

 吉田孝雄議員からは、この千年紀事業をより一層実りあるものにしていくための御提案をいただきました。私と致しましても、千年紀事業を単なる一過性のイベントとせず継続性のあるものとしていくためには、市民の皆様の参加と地域の文化やコミュニティを生かした取組が大変重要であると考えております。

 この考えを具体化する事業の一つとして、議員の地元であり源氏物語ゆかりの地が数多くございます上京区において、区政策提案予算を活用し、地域の魅力の再発見につながる区民リレー講習会やボランティアの協力による歴史散策などを実施する予定でございますが、ご提案のありました市民の皆様からの企画や提案につきましても、千年紀委員会と連携を取り、広く協賛事業として認定するなど市民の力の結集を図って参りたい考えでございます。

 また、国際シンポジウムや子どもたちを対象とした事業など、源氏物語千年紀を多世代・多文化の取組みとすることにつきましても、その趣旨を十分に踏まえ、しっかりと取り組んで参りたい考えでございます。

【ようこそアーティスト文化芸術特別授業】(星川副市長)

 私からは文化芸術都市創生計画の重点事業の一つでございます、「ようこそアーティスト文化芸術とくべつ授業」についてお答え致します。この取組は、子どもたちが優れた文化芸術の本物の魅力に触れる機会を作ることによりまして、文化や芸術に親しむきっかけを生み、豊かな感性や人間性をはぐくむことを目指して今年度から新たに実施するものでございます。

 現在準備を進めておるところでございますが、能・狂言やお茶・お花などの伝統文化から演劇・ダンスなどの現代芸術まで、京都が誇る幅広い分野の芸術家の方々を小中学校等に派遣し、子どもたちに優れた文化芸術に直接触れてもらうことと致しております。

 実施に当たりましては、議員からもご提案をいただきましたが、学校等の希望を広く聴きながら各地域で実施できるよう努めて参ります。また、本市芸術文化特別奨励制度で支援育成して参りました若い人材も登用し、アンケート等により子どものニーズも把握しつつ、多彩な事業内容となるよう工夫して参ります。

 さらに、今年度の成果を踏まえながら来年度以降実施校を拡大することも視野に、子どもたちにとって素晴らしい経験となるような事業を計画的かつ積極的に実施して参ります。以上でございます。

【妊産婦検診】(上原副市長)

 私からは妊産婦検診についてお答え致します。出産までの継続的な妊産婦検診の受診は、母胎や胎児の健康を確保し、健やかな出産を迎えていただくために大変重要なことであると考えております。

 本市におきましては、従来から妊娠届出時に母子健康手帳と併せて妊婦検診受診票を交付し、妊産婦検診を公費で1回受診できることとし、また市民税非課税世帯など低所得者の方に対しましては、経済的負担を軽減するため公費負担を2回としてきております。

 第3子目の妊産婦検診につきましては、公費負担により5回分を無料とする議員のご提案につきましては、市民の皆様が理想とされる3人の子育てを社会全体で応援していくものであり、少子化対策として大変示唆に富んだ施策であると考えております。本市の財政状況は非常に厳しい中にありますが、ご提案の趣旨を十分に踏まえ、妊産婦検診の公費負担の在り方につきましては、引き続き検討を進めて参ります。以上でございます。

【CAPプログラム】(門川教育長)

 CAPプログラムについてでありますが、議員ご指摘のとおり子どもたちの力を信じ、子どもたちがいじめや虐待をはじめ身近に迫った危険から、自分自身を守る力を身に付けるよう指導することは極めて重要であります。

 本市では、3年前からこうした考えの下にCAPプログラムを教員研修に導入し、ワークショップなどを通して教員の指導力向上を図っております。これまで延べ300人を超える教員が受講しており、子どもたちに自信を持って安全な行動を自ら選択できる実践的な態度を養う取組みが各学校において進められております。

 また、ご提案のパイロット校につきましても、PTA・地域と連携して、このプログラムを採り入れた活動を進めている学校が増えてきておりますので、そうした学校を研究校に指定するなど実践研究をより深め、その成果を全市に広げることによりプログラムの趣旨を生かした取組みの拡大に努めて参ります。以上でございます。

(源氏物語千年紀事業は、この後にも常任委員会などで繰り返し質問し、具体的な提案が受け入れられ、多くが実現できました。子育て支援や教育、文化芸術などの施策も力を入れて頑張っています!)