私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「日本の経済政策」小林慶一郎

2024年2月29日

サブタイトルが「失われた30年をいかに克服するか」という極めて重要なテーマの本書は、2024年1月に発刊された中公新書で、著者が東大→通産省→慶応大学教授、という松井孝治京都市長と同じような経歴なので、興味深く読みました。

「失われた30年」という長期停滞から抜け出せない中、なぜこれほど長い低迷が続いたのかをシビアに検証し、苦境を突破するには何が必要なのかを丁寧に提言されており、松井新市長も同様の見解ならば良いなぁ~と率直に思いました。

第1章から第4章までで、「バブル崩壊」と「デフレ長期化」「世界金融危機」の流れの中で、日本経済が目先にとらわれて勇気ある政策が先送りされ続けてきた失敗を分析。第5章から終章までで、長期停滞の30年を俯瞰し、持続可能な発展への教訓が論じられています。

まだまだ頭が整理しきれていませんが、「失われた30年」を克服するためには、為政者が庶民を見下す“エリート意識”を捨て、政策が現場に与える影響に思いを馳せる想像力と、対話に基づく柔軟な思考による政策論議、そして縦割りを超えた意思決定が重要と学びました。

私自身は、高度経済成長期に生を受け、1980年代に青春時代を過ごし、90年代というバブル崩壊以降に結婚して家族を養ってきた世代(85年に就職したばかりの若僧でしたのでバブルの恩恵はほとんど受けていません)ですので、この30年の経済低迷は切実な体験です。

エリートと庶民、高齢者と若者、大企業と中小零細企業などを「勝ち組・負け組」とカテゴライズして、不平不満を焚きつけるような論調が目立つ昨今ですが、それでは「分断」が促進されてしまうと憂えます。日本社会に根深い対立の構造を超克するために、公明党は価値を創造する人間主義を基調として、現場の知恵を最大限活かす政策提言を積み重ねていく決意です。