私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「逃げるは恥だが役に立つ」海野つなみ原作

2017年12月7日

今回はエンターテインメントがテーマ。京都市活性化の重要なアイテムの1つである「文化芸術」「コンテンツ産業」の振興に貢献するべく、京都市会唯一の“芸大出身議員”として奮闘している私・吉田たかおが、テレビドラマの原作漫画とシナリオを、大まじめに紹介させていただきます。おすすめです!

昨年(2016年)秋にTBS系で放映され社会的現象を生んだ「逃げるは恥だが役に立つ」を覚えていますか? 私も夢中になって視聴し、毎回ムズキュンしていました。最終回が終わっても何度も録画を見返す私を見かねてか、妻が「父の日のお祝い」という名目でDVDボックスを購入してくれたくらいです。そのうえ、横浜出張の折に書店で発見した「シナリオブック」も購入。これも面白いのなんのって!「逃げ恥ロス」は半端ありません。

主人公の妄想が炸裂して有名番組のパロディが次々と登場する、小ネタ満載の軽妙な演出もさることながら、番組のラストで流される「恋ダンス」に心をわしづかみにされました。星野源の癒しの歌声とスピーディーな音楽が大人気の要因であることは間違いありませんが、ダンスを踊る登場人物のセンターが新垣結衣(ガッキー)だったからこその大ブレイクだと確信します。ま、一言でいえば文句なしに「かわいい~!」のです。(この点、世間の老若男女のほとんどの方が異論無いと思います)

このドラマ、キャッチフレーズが「社会派ラブコメディ」と銘打たれていて、当初は何のこっちゃ?と思っていたのですが、回を重ねるうちに、描かれるテーマが現代社会の縮図と言って過言でないほどギッシリと詰まっていることが分かってきました。

「就職難と派遣切り」「草食系若者の高齢童貞(処女)化」「独身キャリアウーマンの生きづらさ」「シングルマザーの貧困」「ブラック企業やリストラ問題」「熟年夫婦の離婚危機」などなど、今まであまり描かれなかったシビアな課題が、これでもかと出てくるのです。脇役に帰国子女や性的少数者も登場して存在感を発揮しているのですから、凄いったらありゃしない。

そんな中、この作品のメインテーマである「契約結婚」で突き付けられたのが、男女が差別なく対等に活躍するという大義名分がマスコミを賑わせているものの、現実にはなかなか理解されてこなかった「専業主婦の対価」というもの。私も思わず「うっ!」と唸りました。専業主婦は職業なのか、タダ働きなのかという視点は、恥ずかしながら今まであまり見えていなかったことを白状します。

ドラマでは、主人公2人が契約を交わして同居した当初は「夫が雇用主で妻が従業員」と言う立場であったのが、恋愛感情を確かめ合った後は「主婦のタダ働きは愛情の搾取ではないか」という難問に直面します。まして、共働き夫婦の家事はどうなるのか。多くの視聴者が2人の恋の行方にやきもきしながらも、やがて人生の重要なテーマの1つ1つが他人事ではなく自らの心の奥底に刻んでいった。これこそ、このドラマが大きな支持を獲得し、その後も数々の賞を独占した理由ではないでしょうか。

登場人物たちが紆余曲折の末に、「どんなに親しい間でも、感謝とリスペクトを忘れてはならない」ということを学び、「夫婦間は共同経営責任者=CEOである」という結論に達します。私も大いに影響を受け、自宅の風呂掃除を担当し、週3回のごみ出しを引き受けています。(ただし、先日の男女共同参画シンポジウムでは識者が「ごみ出しは家事ではない」と断言。思わずギャフンとなりましたけど・・・)

放映終了から1年がたとうとしていますが、私の中ではいまだ魅力を失っていない稀有なドラマ「逃げ恥」は、今までの価値観を劇的に変えてくれました。関心をお持ちの方はDVDレンタルをお勧めします。原作漫画もレンタルできますよ。これも滅法おもしろいです。ご関心ある方は是非お読みください。(#^.^#)