私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「永遠のゼロ」 百田尚樹

2012年2月10日

この「おすすめ読書」ページの更新が滞り、ご心配をおかけしています。心よりお詫び申し上げます。お詫びのしるしと言えば何ですが、この半年間で実に4回も読み返した小説を紹介させていただきます。

「えっ、4回も?」と思われるかもしれませんが、読み返すたびに感動が深まり、しみじみと味わうことができる稀な作品。それが、映画にもなった「ボックス!」の著者・百田尚樹氏のデビュー作である本作なのです。

私が口を酸っぱくして百万言を費やすよりも、講談社文庫版の解説を引用させていただいた方が、読者のみなさんにとって百万倍すてきだと思います。解説を担当したのが、先日亡くなった俳優・児玉清氏。読書家としても著名な児玉氏の熱い賛辞をご堪能下さい。

――本書「永遠のゼロ」と出逢えたときの喜びは筆舌に尽くし難い。それこそ嬉しいを何回重ねても足りないほど、清々しい感動で魂を浄化させてくれる稀有な作家との出逢いに天を仰いで感謝の気持ちを表したものだ。

――読みはじめて暫くして零戦パイロットにまつわる話だと徐々にわかってきたとき、僕の胸は破裂するほどの興奮に捉われた。(略) 途中、何度も心の底からこみあげてくる感動の嵐に胸は溢れ、突如うるうると涙し、本を閉じたときには、なにやらハンマーで一撃をくらったような衝撃とともに、人間として究極とも思える尊厳と愛を貫いた男の生き様に深々と頭を垂れ、心の中を颯と吹き抜けた清々しい一陣の風とともにうるわしい人間の存在に思いっきり心を洗われたのだ。

――僕は号泣するのを懸命に歯を喰いしばってこらえた。が、ダメだった。目から涙がとめどなく流れた。(略) 涙の流れ落ちた後、僕の心はきれいな水で洗われたのごとく清々しさで満たされた。

ねっ、素晴らしいでしょ? これほど「清々しい感動」を繰り返す文章も珍しいと思いますが、いやらしさは微塵も感じませんよね。私の読後感も全く同じです。ホンマに“おすすめ”です。

戦争ほど、悲惨で残酷なものはありません。数え切れない若者の未来を奪い、生き残った人に過酷な運命を強いました。絶対に戦争だけはダメだと痛切に思います。

そして同時に、現代にも通じる日本人のぬぐい難い悪弊を再確認することも可能な本だと言えます。その悪弊とは、かけがえのない人命を軽んじ、若者を消耗品のように使い捨て続けていることです。

本書は、第二次大戦中の第一線の兵士が飛行機や軍艦よりも軽視され、過酷な戦場で「消費」されている姿を浮かび上がらせていますが、それは高度成長期の「ビジネス戦士」もバブル崩壊後の「非正規契約社員」も、全く変わっていないのではないでしょうか。

これからの時代は、決してそうであってはなりません。青年を最大限に尊敬し、無限の可能性を信じ、若々しい活力が漲る社会を構築していくべきであり、そのために政治の担う役割と使命は大きいと痛感しています。

あー、この文章を書いたら、もう1回読み返したくなってきました。5回目の「永遠のゼロ」も、豊かな感動を与えてくれることでしょう。忙しい時期なので、1日数ページしか進みませんけど、まっ、えーんちゃいます?!