「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎
突然ですが、ビートルズは好きですか?
私は大好きです。自慢じゃないが、ほとんどの曲は口ずさめます。(じゅうぶん自慢やって!) ――特に解散前後のアルバムは、複雑で深くて悲しくて、何よりも美しいですよね。「アビーロード」は傑作だと確信しています。
昨年の秋に、家内が伊坂幸太郎の書籍を何冊か購入した時、「アビーロード」に出てくる楽曲と同じ題名の本を発見。へぇ~と思っていたのですが、私自身は時間がなく読まずじまいでした。
ところが、今年に入って、広末涼子と中谷美紀が共演した映画「ゼロの焦点」をレイトショーで観にいったとき、堺雅人主演の映画「ゴールデンスランバー」の予告編に衝撃を受け、絶対に時間をこじ開けて観んにゃと心に決めておりました。
今か今かと封切り日を待つ日々。家内の机には、待ちわびる映画と同じタイトルの本がある・・・・。「読んでから観るか、観てから読むか」という究極の選択を迫られましたが、幸いと言うか何と言うか、多忙すぎて読む時間が取れないまま、めでたく封切りの数日後に、映画館に飛んで行ったのです。
いや~っ、面白かった。お勧めです。なんてったって、無実の男が首相暗殺犯の濡れ衣を着せられて逃亡するという抜群の面白さに、冒頭からラストまでハラハラドキドキしっぱなし。観終わって、深夜の千本通りを意気揚々と歩いて帰ったのを覚えています。
その後、2月に入ってから、葬儀や選挙応援や政務調査で、丹後・美山・日吉町へ雪道をスタッドレスでないタイヤで走ったり、予算議会を迎えて書類の山をさ迷うなかで、体調を崩して唇とわき腹に「ヘルペス」を発症してしまい、ドクターストップがかかってしまいました。ムリしすぎたらあきまへんなぁ。
昼間の議会活動と政務調査活動は無理やりセーフですが、早朝の街頭活動や夜の訪問対話活動はアウト。仕方なく自宅で療養を余儀なくされてしましました。そこでタナボタのように、伊坂「ゴールデンスランバー」を読む時間ができたのです。
ミステリー作品は「観てから読む」と、ドキドキ感が無いものなのですが、これは違いました。文章が軽やかで脂っこくなく、それでいてお洒落なのです。特異な事件を描いているのにリアルで、人物造詣も巧み。理屈抜きに感情移入できるのです。結末を知ってしまっているのに、張り巡らされている伏線が解き明かされるカタルシスにわくわくしながら頁をめくる自分がいるのです。
バラバラになったビートルの心をつなぎとめたいと、執念でいくつかの短い曲を編集して「ゴールデンスランバー」を作り上げたポール・マッカトニーの魂が、伊坂幸太郎の紡ぎだす物語の奥深くに刷り込まれていました。
「読んでから観ても、観てから読んでも」抜群に面白い稀な作品が、伊坂版「ゴールデンスランバー」です。「アビーロード」を擦り切れるくらい聴いたことがある人なら、涙を流して喜ぶことでしょう。
もう1度申し上げます。おすすめです!
PS:おかげさまで、ヘルペスは治りました。ご心配をおかけし、申し訳ありませんでした。
PSその2:伊坂幸太郎作品では「重力ピエロ」も良いですよ。家内はこっちのほうが好きとのこと。映画の主演が加瀬亮と岡田将生だからかな?