「日本の統治構造」 飯尾潤
この欄で、村上春樹や東野圭吾を取り上げましたが、議員になってからは小説を読む機会はかなり減りました。まっ、しゃーないと言えばしゃーないですわね。
昨年度は、小説や歴史書はあまり読まず、政務調査費で購入した70冊の書籍は、地方自治や教育問題、外交や環境などのお堅いものばかり。特に後半は、激動の政治状況を分析し、確固たる理論武装で言論戦を勝ち抜くために、政治を扱う新書を連続して買い求め、研さんを重ねました。
いま解散総選挙がヒートアップしており、読者の皆さんも関心が増しておられることでしょう。そこで、私が昨年から今年にかけて購入した政治関係の新書を紹介させていただきます。
山口二郎「戦後政治の崩壊」、篠原一「市民の政治学」(ともに岩波新書)は古典的名著ですが、昨年の新刊本は過激なタイトルが大きな特徴。佐伯啓思「自由と民主主義をもうやめる」(幻冬舎新書)、野中尚人「自民党政治の終わり」(ちくま新書)、山口二郎「政権交代論」(岩波新書)などですが、特に、歳川隆雄「自由と民主が無くなる日」(幻冬舎新書)なんかは、自民党だけでなく民主党も無くなるようなインパクトです。
これらは、戦後政治を独占してきた自民党政治が金属疲労を起こして疲弊した原因を、具体的かつ多角的に検証しており、スッキリするほど分かりやすいです。おすすめです。
そのなかの白眉が、飯尾潤「日本の統治構造」(中公新書)。本書の卓越した論説により、サントリー学芸賞と読売・吉野作造賞を受賞した著者は、何と私と同じ1962年生まれ。東大法学部卒業後に同大学院博士課程修了した法学博士で、ハーバード大学客員教授等を経て政策研究大学院大学副学長を務めるという、超エリートではありませんか。上には上がいるものですなぁ。
本書で繰り返し述べられているように、官僚政治からの脱却が焦眉の急であることは論を待ちませんが、ルールを逸脱した党利党略では、本質的な改革には直結しないことが良く理解できます。著者は、自民党にも民主党にも冷静かつ厳しい視線を投げかけているのです。
小説の場合は、あらすじや結末を紹介するのはご法度ですが、本書は2年前に出版され、人口に膾炙しているので、最終章の結論部分を引用させていただいても、バチは当たらないと存じます。
――なによりも求められるのが、政党が社会の利益・意見を吸収し、さらにそれを集約することである。有効な政党は、社会的に深い根を持ち、また社会の変化に耐えるような柔軟性を備えることが求められるのである。(234ページ)
――次に望まれるのは、「民意集約型政党」の整備である。自民党でも民主党でも、この課題は同じである。官僚内閣制のもとでは、(略) 要望を集約して、政策のかたちに変換する政党独自の機能は、弱かったと言わざるを得ない。社会に根を張り、その多様な要求や意見を集約して、体系化していく政党が望まれている。(235ページ)
ここで描かれている望まれる政党像は、まさに地域に根を張ったネットワーク政党である公明党そのものではないでしょうか。公明党の重要性を、自信を持って友人に語っていけるチャンスが今この時であると、本書を読んで確信を深めることができました。いやーっ、ありがたいことです。
目先のパフォーマンスにまみれた政局優先の党利党略ではなく、どこまでも弱者の側に立って政策を実現するべきです。そのことをいっそう確信できた書籍の数々を紹介させていただきました。皆さんもお試しあれ。