私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「それは京都ではじまった」 黒田正子

2009年6月4日

恥ずかしながら、市会議員になってはじめて、ふるさと京都をじっくりと見つめ直すことができました。それまでのサラリーマン生活では、生き馬の目を抜くシビアなITビジネスの世界に身を置き、激闘の連続だったからです。

京都市政に携わる1人となったからには、京都の素晴らしさや魅力を語っていけるようになるとともに、将来を展望するために山積する課題から目をそむけずに、打開への道を真剣に模索しなければなりません。それが市民の皆さんの期待にこたえる道であると自分に言い聞かせて、現場をこつこつと歩いて庶民の生の声をお聞きし、京都に関する書籍も購入してきました。

そんな中で出会った本の1つが「それは京都ではじまった」という魅惑的なタイトルのエッセィです。著者は京都の魅力に取りつかれた愛媛県出身のコピーライター。知る人ぞ知る「京都の謎」三部作の著者でもあります。具体的なエピソードがてんこ盛りで、まさに目から鱗の連続でした。面白いですよ~っ!

京都からはじまったものを、「風俗編」「文化編」「スポーツ/芸能編」「産業/交通編」「学術/教育編」の5つのカテゴリーに分けて紹介されており、文字どおり興味深々。「へぇ~」とか「ほんまかいな!」と声を出しながら読んでいる自分に、何度も気づいたことを告白させていただきます。

歌舞伎や落語、映画、小学校や盲学校、近代ではフォークソングや駅伝などが京都発祥と知っていましたが、アニメ、ビアホール、公衆トイレ、牛乳配達、熱気球、女学校、幼稚園、交響楽団などなど、多種多彩なラインナップも、京都からはじまったとは知りませんでした。

それらのはじまった時期もびっくりです。小学校は明治2年。中学校は翌年。幼稚園と盲学校は明治8年というから凄いですよね。日本初の博覧会が西本願寺で開催された明治4年の翌年には、図書館がはじまり牛乳配達が事業化され、ミネラルウォーターが発売されているのです。

GSバッテリーの「GS」は、何と島津製作所の島津源蔵のイニシャル。明治28年にバッテリーの工業生産を日本で初めて成功させた二代目島津源蔵は、2年後にはレントゲン装置を開発して販売を始めています。彼の父・初代源蔵は明治10年に京都御所で、日本初の気球飛行を成功させた立役者。感嘆するばかりです。

それ以外にも、江戸時代のユニークな話題も一杯です。日本初の人体解剖が行われた場所は今の三条商店街ですし、日本初のそろばん塾は河原町二条にありました。そこで学んだ吉田光由(みつよし)は日本初の数学書「塵劫記」で九九の覚え方を紹介。全国津々浦々に普及し、学力に大いに貢献したとのこと。

最後に――。「玉の輿」の語源も京都なんですって。五代将軍徳川綱吉の生母・桂昌院の本名は「お玉」といい、京都西陣の八百屋の娘でありながら三代家光に見染められて大奥に入ったのだとか。そういえば、坂本竜馬の妻で日本初の新婚旅行を経験した楢崎お龍も西陣生まれでしたよね。

いやぁ~、昔も今も上京には美人が多いのですねぇ。