私の大好きな本の数々をつれづれに紹介します。

「レ・ミゼラブル」 ユゴー

2008年10月6日

ホームページをリニュアールして約2週間。おかげ様でたくさんの皆さんにアクセスしていただき、望外の喜びです。

このページの第1回目は、どの作品にしようと悩みまくっていました。いっぱい候補があり過ぎて、書きたいこともあり過ぎて、混乱していたのです。こんなままでは、油っこい文章にしかならないと、しばらく頭を冷やしていました。

でも、あまり「メンテナンス中」が長すぎてもあきませんので、意を決してスタートさせていただきます。ズバリ、私が今までに一番“泣いた”小説『レ・ミゼラブル』(ユゴー著)を取り上げます。

この作品、約150年前に書かれた小説ですので、活字中毒の私でさえ読みとおすのに苦労したことを告白します。しかも、波瀾万丈のドラマが展開されて息を飲んでいるにもかかわらず、途中で当時の宗教事情や社会通念の解説、歴史的背景の理論的考察が長々と叙述されているので、そのつど詰まってしまうのです。テクニックや形式重視の文学賞に応募したら速攻で落選かも?

でも、本当にすごいのです。圧倒的な感動が、ページを繰るごとに心の奥底に迫ってくるのです。特に、最後の10数ページ、私はとめどなく涙を流しながら読みました。主人公ジャン・ヴァルジャンが息を引き取るシーンでは、嗚咽しながら読んでいました。こんなことは人生でもあまりありません。それほどの感動でした。

後日知ったエピソードですが、この作品を出版するにあたって、出版社から哲学的な部分を削るように依頼されたときに、ユゴーは「軽く読みながせるようなドラマは12か月ぐらいで人気も下火になってしまうだろうが、深遠なドラマは12年間人気を保ちつづけるだろう」(A.モロワ『ヴィクトル・ユゴーの生涯』新潮社)と答えたといいます。それよりももっと長く、120年以上も愛され続けている作品、それが『レ・ミゼラブル』なのです。

最後に、私の好きな一節を紹介して終わります。「海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である」(豊島与志雄訳)